研究課題/領域番号 |
17K17814
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
岩崎 広高 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (40781589)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | miR-494 / ヒトiPS細胞 / 筋分化 / p300 |
研究実績の概要 |
平成30年度には、以下を明らかにした。 ①持久的運動負荷によってC57BL/6jマウスの腓腹筋でmiR-494の発現が低下し、ミトコンドリア関連タンパク(TFAM,Foxj3)が増加する ②ヒトiPS 細胞の筋分化過程においてmiR-494が転写共役因子p300を標的遺伝子とし、MyoD/miR-494/p300連関によって筋分化の初期段階に関係する 具体的には、①運動によるミトコンドリア増加におけるmiR-494の役割を明らかにする目的で、C57BL/6Jマウスにトレッドミルによる持久的運動負荷を加えた。その結果、骨格筋は、質・量ともに変化し、これまでにperoxisome proliferator activated receptor gamma coactivator 1 alpha (PGC1-a)、mtTFA、Foxj3、MEF2等の遺伝子が運動により増加し、反対にmiR-494は運動により減少することを見出した。この成果より、miR-494と運動の関係の一端を明らかにすることができた。②p300のコンストラクトをmiR-494の前駆体とともにトランスフェクションする実験を行った結果、筋芽細胞への分化効率はmiR-494の過剰発現条件下でも維持されることがわかった。さらに、p300は筋分化とともに低下することが明らかとなり、筋分化におけるMyoD/miR-494/p300連関が筋分化の初期段階に関係することが明らかになった。この成果によって、筋ファイバータイプ決定メカニズムの一端が明らかとなった。 また、生体内でのmiR-494の働きを検討するために、筑波大学に依頼しCRISPR-Cas9を用いてmiR-494ノックアウトマウスを作製し、その繁殖に成功しており、現在運動能などの解析を進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の計画では、まず第一に運動によるミトコンドリア増加におけるmiR-494の役割を明らかにすることが目的であった。結果、マウスにおいてトレッドミル運動負荷をかけることで、腓腹筋においてPGC1-a、mtTFA、Foxj3、MEF2等の遺伝子が増加し、反対にmiR-494は運動により減少することを見出した。さらに、miR-494の直接標的遺伝子として転写共役因子p300を同定し、ヒト筋ファイバータイプ形成メカニズムの一端を明らかにすることができた。 しかし、miR-494ノックアウトマウスを作製する計画では、近年急速に普及してきたCRISPR-Cas9を用いてmiR-494ノックアウトマウスを作製する方針に変更した結果、平成29年度中にmiR-494ノックアウトマウスを作製することに成功したが、繁殖がすすまず、平成30年度の後半で仔マウスを得ることに成功した。このことから、当初の計画ではmiR-494ノックアウトマウスの糖代謝などを解析する予定であったが、まだ実行できていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度には、以下を計画している。 ①miR-494の糖代謝、筋線維形成に与える働きを検討するため、miR-494ノックアウトマウスに糖負荷試験、インスリン負荷試験や、代謝ケージによる呼吸商の測定を行い、糖代謝について検証する。骨格筋において、筋線維形成に関与するPGC1-a、SIRT1、PTEN、mtTFA、Foxj3等の遺伝子の動き、mtDNA発現を確認する。また、MYHタンパク発現や、筋生検標本によるATPase染色によって筋ファイバータイプを確認する。 ②miR-494ノックアウトマウスに、トレッドミルによって持久的運動負荷を加え、持久運動能力を検討する。また、握力を測定することで、筋力も検討する。 上記の一連の研究から、miR-494が糖代謝、骨格筋における筋ファイバータイプ形成、ミトコンドリアバイオジェネシス、運動耐容能を制御する機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
miR-494ノックアウトマウスの繁殖に必要な予算が当初の計画より少なかったため、次年度使用額が生じた。 翌年度分として申請した助成金と合わせた使用計画として、miR-494全身ノックアウトマウスのみならず、miR-494骨格筋特異的ノックアウトマウス、脂肪細胞特異的ノックアウトマウス、褐色脂肪細胞特異的ノックアウトマウスを作製し、骨格筋および、骨格筋と同じ間葉系幹細胞由来である脂肪組織におけるmiR-494の詳細な機能解析をすすめる。
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