研究課題
2011年に厚生労働省が特に対策を進める5大疾患に精神疾患を加えたように、精神疾患の病態解明が期待されている。これまで、神経細胞を標的とした研究が多く行われてきており、一定の成果を上げているが、未だ病因の解明には至っていない。研究代表者は、大うつ病を含む気分障害患者の死後脳解析で、前頭極灰白質においてオリゴデンドロサイト系譜細胞の減少を認めた。また近年、DNAメチル化などのエピゲノム変化が大うつ病の病態と強く関係すると考えられてきている。一方、C型肝炎などの治療薬として用いられているインターフェロンαは、投与した患者がうつ症状を呈することが報告されている。そこで本研究では、インターフェロンαを慢性投与したカニクイザル死後脳のエピゲノム解析を試みる。昨年度までにインターフェロンαを慢性投与したカニクイザルの死後脳前頭極灰白質から、神経細胞およびオリゴデンドロサイト系譜細胞の細胞核を分取し、得られたDNAから、オリゴデンドロサイト関連因子であるSox10のプロモーター領域のDNAメチル化の解析を行ったところ、オリゴデンドロサイト系譜細胞では、~50%程がメチル化されていたが、インターフェロンαの投与でメチル化率が~10%程に変化しており、細胞種特異的なエピゲノム変化が生じていることを見いただいた。また、多くの遺伝子から特定のメチル化異常を見出すことは困難であることから、インターフェロンαを慢性投与したカニクイザルの死後脳前頭極灰白質のRNA-seq(網羅的遺伝子発現解析)を行い、優位に発現量が変化した因子として2因子が同定された。しかしながら、上記解析は3個体のみの解析であり、より説得力のあるエビデンスを得るには、解析個体数を増やす必要がでてきた。そこで新たに6個体のカニクイザルを購入し、インターフェロンの投与を行い、行動解析などを行った。
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Cerebral Cortex
巻: 30 ページ: 6415~6425
10.1093/cercor/bhaa200