植民地朝鮮の朝鮮人に対する教育政策の既存の研究は、授業やカリキュラムなどの正課に集中しているが、本研究は朝鮮の中等学校の放課後の部活動を検討するものである。朝鮮総督府は中等学校のカリキュラムなどには介入したが、部活動に対する政策は規定してなかったと考えられる。また、部活動には生徒が自発的に参加するという点に着目し、これまで支配される客体として描かれてきた朝鮮人生徒の主体性を軸として朝鮮教育史を再構成することを目指してきてた。 2021年度は、朝鮮人が通った中等学校である高等普通学校の『学友会誌』を収集し、部活動の状況を調査する予定であった。しかし、2020年度に続いて新型コロナウィルスの影響で韓国での調査が不可能となったため、分析することが出来なかった。そのため、韓国でデジタル史料として公開されている『学友会誌』の分析を行ったものの、史料的には大きく制約され、研究を十分に進めることが出来なかった。 他方で、部活動に特化した研究ではないものの、民族運動やナショナリズムとの関連から、植民地期の中等学校生について分析し、著書『韓国「建国」の起源を探る―三・一独立運動とナショナリズムの変遷』(慶應義塾大学出版会、2021年)の第3章において、研究成果として発表することはできた。
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