研究実績の概要 |
本年度の成果は以下の4点にまとめられる。 (1)医療人GPの内容と大学病院における女性医師の増加について検討を行った。助成金によるプログラムが女性医師を増加させたという証拠は見いだせなかったが、これらのプログラムが子供を持つ女性医師の地位を向上させた可能性はある。本研究結果はKae Okoshi, Kayo Fukami, Yasuko Tomizawa, Analysis of Social Policy and the Effect of Career Advancement Support Programs for Female Doctors, Women's Health Reports, 2(1) 337-346 2021として公表した。 (2)医学部入試の男女別入学率について全学問分野と比較を行った。女性が男性よりも厳しい入学基準を課されている可能性が示唆された。本研究結果はGender bias in the medical school admission system in Japan, Kayo Fukami, Kae Okoshi, Yasuko Tomizawa, SN Social Sciences, 2(5) 2022として公表した。 (3)スウェーデンにおいても古典的なジェンダー分離が残っている。文献調査を実施したところ、キャリアが進展するにつれて性差別の経験をすることを明らかにするなど学校・職場文化に着目した文献が主要であった。本研究結果はGender Challenges Faced by Female Physicians in Sweden: A Literature Review, Japanese journal of Northern European studies, vol. 18(受理済み、出版準備中)として公表した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は最終受領年度であるため、上で掲げた進行中の課題について可能な限り社会に公表していく。個別の課題については以下のとおりである。 (1)女性医師の専門の選択傾向と勤務体制の関係。現在厚生労働省より取得した「医師・歯科医師・薬剤師調査」をもとにデータベースの整理と集計を行っている。地域別の集計の際には規模に応じて大都市・地方・過疎地に分類する必要があるが、市町村合併などで地域の規模が変化しているため、これに注意しながら分類を行っている。分類が終了次第、女性医師の選択地域と診療科の関係について分析を進めたい。 (2)女性医師支援策の総括。既に公表済みの論文Kae Okoshi, Kayo Fukami, Yasuko Tomizawa, Analysis of Social Policy and the Effect of Career Advancement Support Programs for Female Doctors, Women's Health Reports, 2(1) 337-346 2021において医療人GPに採択された9大学の政策をまとめているが、その他の省庁や医育機関の取り組みについても順次まとめていく予定である。 (3)スウェーデンにおける女性医師の労働環境。現在スウェーデンの若年医師労働組合の助言を得つつ、若年医師への社会保障が欠落している問題などについて情報を収集しているところである。病院民営化という財務上の変化が医師の労務管理や労働時間にいて与える影響について先行研究を中心にサーベイしていきたい。
|