| 研究課題/領域番号 |
17K17821
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| 研究機関 | 京都大学 |
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研究代表者 |
畑田 直行 京都大学, 工学研究科, 助教 (00712952)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | 化学蓄熱 / 硫酸塩 / 脱挿入 / 拡散係数 |
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| 研究実績の概要 |
近年、100-200 ℃においてベータ硫酸ランタンβ-La2(SO4)3結晶中へ気相中の水が比較的高速に脱挿入されることが発見された。この現象は従来知られておらず、また脱挿入時に吸熱・発熱を伴うことから化学蓄熱材としての応用も期待される。本研究は、その微視的メカニズムおよび速度論を解明することを目的としている。
本年度は、β-La2(SO4)3への水の挿入過程の速度論的解析を行った。β-La2(SO4)3への水の挿入過程は、気相中の水分子の拡散、表面反応、結晶粒界拡散、結晶粒内拡散などの複数の素過程からなると考えられ、その解析のためにはβ-La2(SO4)3粒子の形状・サイズを明らかにする必要がある。そこで、β-La2(SO4)3の比表面積を窒素ガス吸着測定により評価した。β-La2(SO4)3は、原料であるLa2(SO4)3・9H2O（粒径約50ミクロン）を300 ℃に加熱して脱水させて作製した。試料粒子の外形は脱水前後で大きな変化は見られなかった。しかし吸着測定の結果、β-La2(SO4)3の比表面積はLa2(SO4)3・9H2Oの25倍に増大しており、厚さ約200 nmの平板状の微細な結晶が生成していることが示唆された。また熱重量測定により、一定温度におけるβ-La2(SO4)3への水の挿入速度を評価し、第一原理計算により推定したβ-La2(SO4)3結晶粒内における水の拡散係数と比較した。その結果、β-La2(SO4)3への水の挿入時、結晶粒内の拡散距離はせいぜい約100 nmであり、微細化された結晶粒の粒界拡散が高速な挿入に寄与していることが示唆された。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、当初予定していた粉末X線回折・中性子線回折パターンのRietveld解析によるベータ硫酸ランタン結晶中での水の存在位置の決定には至らなかった。一方で、平成30年度以降に実施予定であったベータ硫酸ランタンへの水の挿入の速度論的解析について、実績の概要に記したように、すでに成果が得られている。以上の理由により、総合的な進捗状況はおおむね順調であると自己評価する。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は、ベータ硫酸ランタンへの水の脱挿入の微視的メカニズムおよび速度論について、より詳細な解析を行う。まず透過型電子顕微鏡を用いてLa2(SO4)3・9H2Oからβ-La2(SO4)3への脱水時に形成される組織を直接観察し、平成29年度の成果の妥当性を検証する。また、β-La2(SO4)3単結晶を合成し、β-La2(SO4)3結晶中における水の拡散係数とその異方性をより正確に明らかにすることを目指す。さらに、粉末X線回折・中性子線回折・赤外分光測定に基づき、硫酸ランタン結晶中における水の存在位置・存在形態を調査する。
本研究で得られた研究成果は論文として纏め、平成30年度に学術誌に投稿する予定である。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、比較的物品の消耗が少なく実験を進められたため、それらの購入費用を安く抑えることができた。また、化学工学会第49回秋季大会において、本研究に関する発表とは別に、他の研究プロジェクトに関する成果発表・情報収集も行ったため、旅費については別の予算により支払を行った。そのため、当初の予定より旅費の使用額が低くなり、次年度使用額が発生した。
平成29年度に生じた次年度使用額および平成30年度分として請求した助成金については、当初の予定通り、各種消耗品の購入費、高純度試薬とガスの購入費、化学工学会をはじめとする成果発表のための旅費として使用する予定である。
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