研究課題
若手研究(B)
ベータ硫酸ランタンへの水の脱挿入は、ホスト結晶構造を維持したままでの、結晶内に一次元的に配列した安定位置をつたった一次元拡散によるものと確認された。硫酸ランタン九水和物を脱水させて生成したベータ硫酸ランタン粉末の組織は、厚さ数百ナノメートルの平板状の微細な結晶が積層した「板状節理」状となっており、その粒界拡散が水の高速な脱挿入の起源となっていることを明らかにした。
化学熱力学
化学蓄熱は産業排熱の有効利用のために期待される技術のひとつである。硫酸ランタンは、200℃以下の比較的低温であっても可逆的に水蒸気と反応し、吸熱・発熱を伴って水が脱挿入されるため、この温度域における化学蓄熱技術の開発に向けて興味深い物質である。本研究の意義は、本物質への高速な水の脱挿入メカニズムを解明し、材料組織、結晶構造に立脚した化学蓄熱材の開発指針を提案したことである。