研究課題/領域番号 |
17K17822
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
手塚 真樹 京都大学, 理学研究科, 助教 (40591417)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多体局在 / Sachdev-Ye-Kitaev模型 / 量子カオス / 準位統計 / トポロジカル量子ポンピング / エンタングルメント・エントロピー / 厳密対角化 |
研究実績の概要 |
相関の強い非一様系で起きる多体局在について、2N個のマヨラナフェルミオン間に全対全相互作用のある、トポロジカル超伝導体などによる実現可能性が考えられているサチデフ-イェ-キタエフ(SYK)模型について、国際共同研究により、フェルミオンにランダムな質量を導入した際のフォック空間での固有状態の局在を考えた。多体局在の起きる点および、その手前での固有関数のモーメント、ハミルトニアンの固有エネルギーの準位統計について、解析的な結果と厳密対角化による数値的結果のよい一致を見た。 さらに、この系で、多体局在の手前でも非エルゴード的な状態となっているかどうかを調べた。ほぼ等エネルギーの状態が張る部分空間でエルゴード性が成り立っていると仮定した場合の、系を二分した際のエンタングルメント・エントロピーの解析的な表式は、フェルミオンの質量分布を決めるパラメータδに依存しない領域をもつ。厳密対角化で求めたエンタングルメント・エントロピーが、N が大きくなるとともに、δの関数としてプラトーを発達させることを確認した。 また、2018年度に Physical Review Letters 誌に出版済みの論文に対し2020年4月に投稿されたコメントについて、リプライを上記の結果も引用して執筆し、査読を経て2021年3月に出版された。 このほか、本研究課題に関連し、年度内に、トポロジカル量子ポンピングに関し冷却気体系で2次元への非自明な拡張を提案した論文、SYK模型や多体局在の典型的模型に関して2点関数の行列の特異値の準位統計とカオス性の対応を示した論文、SYK模型の上記とは別の変形についてスペクトル構造因子等を調べ、カオス-可積分転移を明らかにした論文が出版に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トポロジカル量子ポンピングに関して新たな提案が出版されたものの、トポロジカルなエッジ流の観測される系に対する粒子間相互作用の効果に関する成果については、論文出版に至っていない。 一方で、応募当初予期していなかった、SYK模型における多体局在の提案に続いて、多体局在に関して定量的な結果が得られたほか、本研究の当初の計画と密接に関連する概念である量子カオスなどに関しても複数の論文を出版した。
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今後の研究の推進方策 |
トポロジカルに非自明な系での輸送および、多体局在を示す系での多体局在相内外での量子スクランブリングを定量的に比較した研究について、早期に成果の出版を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者の所属する外国機関への滞在を予定していたが、日程の再調整が必要となった。研究の進捗状況も考慮し、補助事業期間の再延長を申請した。さらに、2020年9月, 2021年3月の日本物理学会参加等、国内出張も予定していたが、日本物理学会の現地開催が中止となり、国内の他研究機関への訪問も困難となった。 次年度使用額については、研究の推進および成果発表のため、主に旅費・論文掲載料として有効に使用する計画である。
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