研究課題/領域番号 |
17K17831
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三木 貴雄 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 特定助教 (30452345)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 概日リズム / がん抑制遺伝子 / ヘム / Rb / PER2 |
研究実績の概要 |
概日リズムは、日々の睡眠サイクルを含む一日約24時間の生体の恒常性を制御している生物の基本的な機構である。近年の大規模疫学研究によると、シフトワーク従事者(看護師、パイロット)は、がん罹患率が有意に上昇することが報告された。また、正常な概日リズムが保てないPeriod2欠損マウスは癌になりやすいことが報告されている。このことは、がんと概日リズムの密接な関連性を示唆しているが、その分子機構は不明な点が多い。本研究課題では、がん抑制遺伝子Rbが概日リズム遺伝子PER2のヘム結合を阻害する機構を解明し、がん抑制遺伝子Rbと概日リズムの新たな関連を明らかにすることを目的とする。 これまでに、Rbの概日リズム遺伝子に対する影響を検討し、Rbがヘム制御を介して概日リズムを制御する可能性を示唆する結果を得ている。ヘムはO2、CO、NO等とも結合し、レドックスセンサーとして知られており、代謝経路を制御する因子として重要である。また、概日リズムとヘム経路は相互制御機構が存在する(KaasikらNature 2004)。しかし、未だどの因子がヘムのヘムタンパク質への結合を制御しているかは同定されていない。そこで、Rbによるヘム制御機構の重要性の検討を行った。肝臓特異的Rb欠損マウス(Albumin-Cre; Rbflox/floxマウス)を用いて、 Rbの概日リズムコア遺伝子発現量への影響及び、PER2のヘム結合量の測定を行った。また、Rb欠損マウスでの概日リズム複合体のCry1プロモーター結合量をクロマチン免疫沈降法により解析を行った。どちらの手法においてもRbが概日リズムの制御とヘム結合に関係していることを示唆する結果を得た。この結果は、Rbによるヘム制御経路を標的として、がん及びリズム障害を伴う疾患への新規薬剤となる可能性を示唆しており、非常に重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、Rbの概日リズム遺伝子に対する影響を検討し、Rbがヘム制御を介して概日リズムを制御する可能性を示唆する結果を得ている。平成30年度は、Rbによるヘム制御が概日リズムのみならず他のこれまで報告されているRb制御機構(細胞周期、細胞分化等)に対してどのように影響があるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の実験遂行のためには、当初の配分金額では不足であった。しかし、研究が予想より順調に進行したため、実験費用の節約が可能となった。そのため、次年度の計画として組み込んでいた網羅的解析の外部委託など、予算の大きい計画が実行可能となったため、翌年度分として請求した助成金と合わせて研究を進める予定である。
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