概日リズムは、日々の睡眠サイクルを含む一日約24時間の生体の恒常性を制御している生物の基本的な機構である。近年の大規模疫学研究によると、シフトワーク従事者(看護師、パイロット)は、がん罹患率が有意に上昇することが報告された。また、正常な概日リズムが保てないPeriod2欠損マウスは癌になりやすいことが報告されている。このことは、がんと概日リズムの密接な関連性を示唆しているが、その分子機構は不明な点が多い。本研究課題では、がん抑制遺伝子Rbが概日リズム遺伝子を阻害する機構を解明し、がん抑制遺伝子Rbと概日リズムの新たな関連を明らかにすることを目的とする。 これまでに、Rbの概日リズム遺伝子に対する影響を検討し、Rbがヘムを介して概日リズムを制御する可能性を示唆する結果を得ている。ヘムはO2、CO、NO等とも結合し、レドックスセンサーとして知られており、代謝経路を制御する因子として重要である。また、概日リズムとヘム経路は相互制御機構が存在する(KaasikらNature 2004)。しかし、未だどの因子がヘムのヘムタンパク質への結合を制御しているかは同定されていない。そこで、Rbによるヘム制御機構の重要性の検討を行った。その結果、Rbによるヘム制御機構が細胞の代謝経路に非常に重要であるとの結果を得た。この結果は、Rbによるヘム制御経路を標的として、がん及びリズム障害を伴う疾患への新規薬剤となる可能性を示唆しており、非常に重要である。
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