研究課題/領域番号 |
17K17833
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
門 亜樹子 京都大学, 経済学研究科, ジュニア・リサーチャー (20791916)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バルベラック / ティロットスン / キリスト教的人間像 / 道徳哲学 / ジェイムズ・ビーティ / ピエール・プレヴォ / ドゥーガルド・ステュアート / コモンセンス哲学 |
研究実績の概要 |
(1)ラティテュディネリアニズムと自然法学の思想的関連性について、カンタベリ大主教をつとめたラティテュディネリアンのジョン・ティロットスンと、彼の説教を仏訳したユグノーの自然法学者ジャン・バルベラックの思想を、感覚、理性、信仰を中心とするキリスト教的人間像の観点から比較検討した。 (2)バルベラックとティロットスンの道徳思想(およびキリスト教的人間像)が18世紀後半のコモンセンス哲学においてどのように展開したのかについて研究した。アバディーン哲学協会会員のジェイムズ・ビーティおよびトマス・リード(1764年にグラーズゴウ大学に転任)の道徳哲学概念と、ヒュームの(外部世界の存在への)懐疑論に対する両者の批判について比較検討した。さらに、リードの影響を受けたドゥーガルド・ステュアートに関する近年の海外での研究動向を踏まえ、スコットランドおよび大陸(仏語圏)の知識人の交流関係と彼らのカント思想への関心を視野に入れ、ジュネーヴの知識人ピエール・プレヴォの「近代哲学三学派」(アダム・スミスの遺稿集『哲学論文集』[1795年]の仏訳版[1797年]所収の「訳者解説」)の精読と分析に取り組んだ。その中間報告として、日本イギリス哲学会関西部会で口頭発表(「ビーティとプレヴォの哲学史―バルベラック『道徳哲学史』との比較の観点から―」)を行った。 (3)研究課題に関連する業績として、バルベラックがザームエル・プーフェンドルフの『自然法と万民法』(1672年)の仏訳版(1706年)に記した「訳者序文」(「道徳哲学史」)の全訳を出版した。ジャン・バルベラック著、門亜樹子訳『道徳哲学史』京都大学学術出版会、2017年。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度であり、次年度以降の研究の基礎固めの期間として位置づけている。上記(1)で予定していた論文の執筆作業が進み、研究計画に余裕が生じたため、当初の研究計画を前倒しし、次年度に予定していたアバディーン啓蒙に関する研究を実施した。(2)の研究を遂行する過程で、研究対象を18世紀のスコットランド知識人から、さらに18-19世紀前半の大陸(特に仏語圏)の知識人との交流関係を含め範囲を拡大することが、当時の文脈を把握し、諸論点を検討する上で不可欠と判断した。それに伴い、ドゥーガルド・ステュアートと文通していたジュネーヴの知識人ピエール・プレヴォの近代哲学史に関する研究を行った。(2)に関して、ECCO等を利用して原典の各版を入手し、二次文献の調査・収集を進めた。それらの詳細な分析が現段階での課題である。また、(3)のバルベラックの『道徳哲学史』に関して学会発表の機会があり、併せて(2)の研究の中間報告も行った。当初の研究計画よりも広い範囲を対象とすることになったが、研究の進捗状況としては、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、さらに原典と二次文献の精読と分析を進め、論点の整理に努める。研究遂行の過程で得られた知見に基づく新たな展開が予想され、当初の研究計画が拡張されることになる。学会や研究会での発表・討論の際のフィードバックも参考にし、研究成果を論文または著書の形で公表したいと考えている。
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