研究課題/領域番号 |
17K17833
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
門 亜樹子 京都大学, 経済学研究科, ジュニア・リサーチャー (20791916)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バルベラック / ニコル / ジェランド / ラティテュディネリアン / キリスト教的人間像 / ジャンセニスト / 哲学史 |
研究実績の概要 |
(1)前年度に研究したジュネーヴの知識人ピエール・プレヴォの「近代哲学三学派」(アダム・スミスの遺稿集『哲学論文集』[1795年]の仏訳版[1797年]所収の「訳者解説」)との比較の観点から、プレヴォの友人ジョゼフ=マリ・ドゥ・ジェランドの『哲学体系比較史―人知原理との関連性』について、初版(1804年、全3巻)、第2版補訂版の第1部(古代から中世までの哲学史、1822-1823年、全4巻)と、ジェランドの死後出版された同版第2部(文芸復興から18世紀末までの近代哲学史、1847年、全3巻)の目次を翻訳し、第2版補訂版の第2部のスコットランド学派に関する章を精読した。併せて、海外のジェランド研究の状況を調査し、文献資料を収集した。 (2)ラティテュディネリアンのキリスト教的人間像の特徴を明確にするため、ラティテュディネリアンとは対照的な「人間本性の腐敗」を強調するジャンセニストのピエール・ニコルの『道徳論集』(全4巻、1671-1679年)を、ジョン・ロックによる英訳(トマス・ハンコックによる編集版[1828年]、J.S.ヨルトンが編集した対訳版[2000年])を参照しつつ精読した。とりわけ、ニコルとバルベラック、プーフェンドルフ、ロックの自己評価論、自己愛および理性概念を比較検討した。 (3)本年度までのバルベラック研究をまとめた以下の単著を出版した。門亜樹子『啓発された自己愛―啓蒙主義とバルベラックの道徳思想』京都大学学術出版会、2019年2月。 また、バルベラック『道徳哲学史』の邦訳(門亜樹子訳、京都大学学術出版会、2017年)の合評会が、社会思想史学会第43回大会(2018年10月)と経済学史研究会第246回例会(同12月)で開催され、両合評会ではリプライを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」の(1)に関して、本年度も前年度に引き続き、研究対象を18世紀のスコットランド知識人から、さらに18-19世紀前半の大陸(特に仏語圏)の知識人との交流関係を含めて範囲を拡大することが、本研究課題を遂行するために必須の哲学史の見取り図を描く上で不可欠と判断した。同じく(2)に関して、本年度および来年度に予定していた研究の準備段階として、ラティテュディネリアンと対照的なキリスト教的人間像を擁するジャンセニストの思想の検討が必要と判断した。前年度までの研究と、本年度実施した上記(1)と(2)の研究をまとめ、(3)に挙げた単著を出版したが、本年度および来年度に計画していた研究の準備作業にとどまったという点で、研究の進捗状況としては「やや遅れている」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度において、スコットランド啓蒙と自然法学に関する原典と二次文献の精読と分析をさらに進め、論点の整理に努める。研究遂行の過程で得られた知見に基づいて新たな展開が予想され、学会や研究会での発表・討論の際のフィードバックも参考にし、研究成果を論文の形で公表したいと考えている。
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備考 |
「合評会: 門亜樹子訳・J. バルベラック『道徳哲学史』京都大学学術出版会、2017年」 評者:野原慎司、リプライアー:門亜樹子、経済学史研究会第246回例会、関西学院大学、2018年12月。 「自由主義思想の射程」セッション、世話人:森岡邦泰、司会:田中秀夫、報告者:有江大介、森岡邦泰、リプライ:門亜樹子、社会思想史学会第43回大会,東京外国語大学、2018年10月。
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