研究課題/領域番号 |
17K17838
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高田 卓志 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (60444478)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | BNCT / 治療計画 / 補償フィルター / ボーラス / 最適化 |
研究実績の概要 |
熱外中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)では、中性子の体内での熱化を利用することで、熱中性子を深部まで到達させることが可能である。一方で、熱中性子束の体内でのビルドアップや減衰のため、浅部の病巣に対する線量不足や、深部方向に分布した病変に対する大きな線量勾配が生じる場合があり、補償フィルターを用いた線量分布の改善が図られている。本研究では、患者毎に線量分布を最適化したBNCTを実現することを目指して、個々の患者の病変の位置と形状に合わせて補償フィルターを設計・作製する手法を開発することを目的としている。2018年度は以下の項目を実施した。 (1)補償フィルターの形状最適化計算速度の向上:2017年度に実施検討した最適化計算法では計算に多大な時間を要することが判明した。そこで、計算機のハードウェア環境の改善、並びに計算コードの高速化、並列化およびアルゴリズムの見直しによる計算時間の短縮を試みた。その結果、数時間程度の合理的な計算時間にて最適化を実施することが可能となった。 (2)補償フィルターの作成方法に関する検討:3Dプリンタによる補償フィルター作成について検討した。最適化計算によって決定された3次元形状データを、3Dプリンタへの入力データに変換するソフトウェアを整備した。未だ作成には至っていないが、テストデータを用いた試験により十分な精度での作成が可能であることを確認できた。 (3)補償フィルターを患部に設置する際の位置決め手法に関する検討:補償フィルターを患部の指定した位置に正確に設置するためのクロスラインレーザー等の機器を整備した。さらに、補償フィルターの3Dデータ上に位置決めのためのケガキ線を追加する機能を有するアプリケーションコードの作成に着手した。 今後、補償フィルターを実際に作成し、最適線量分布の実験的な検証を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
補償フィルター形状の最適化計算について、想定していたよりも多大な計算時間を要することが判明したため、2018年度にも継続して検討を行った。そのため、2018年度に実施予定であったフィルターの作成技術の検討が当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2019年度は、最適化計算によって決定した形状を有する補償フィルターを3Dプリンタを用いて作成し、当初計画どおりに最適線量分布の実験的な検証を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)補償フィルター位置決めのために購入を予定していたクロスラインレーザー等の機器類を、試験検討の段階であったために一時的に他用途の装置に設置されたもので代用したこと、および補償フィルターの実際の作成に至らなかったためにそのための原材料を購入できていないことが主な理由である。 (使用計画)繰り越した研究費は、補償フィルター位置決めのためのクロスラインレーザー等の機器類を本研究により適した形で整備するため、また、3Dプリンタを用いたフィルター作成のための原材料の購入に使用する。2019年度分として請求した助成金は、当初の使用計画に従って執行する予定である。
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