研究実績の概要 |
本研究は竹材の新規利用システムの構築を目指し、竹の急激なリグニン堆積(伸長成長)過程における細胞壁構造の植物学的解析とそれに基づく高性能セルロースナノファイバー製造手法の検討およびナノ複合材料の開発を行うものである。 今年度は、まず、セルロースミクロフィブリル及びマトリクス成分の構造変化の解析として、竹齢の異なるモウソウチク(当年稈/2/4/5/7/9年生)の節間中央部、内皮側および外皮側のそれぞれから試験片を作製し、3点曲げ試験を行った。また、同部位のX線回折試験により相対結晶化度、微結晶長、ミクロフィブリル傾角の測定を行った。 曲げ試験の結果では弾性率、強度ともに総じて内皮側に比べて外皮側の方が高かった。また、それらの値は竹齢4,5年生で最も高く、1,2年生、7,9年生は低かった。 X線回折による解析の結果、相対結晶化度の竹齢による違いは確認されなかったが、すべての竹齢で内皮側より外皮側の方が高く、ミクロフィブリル傾角は総じて外皮側に比べて内皮側の方が大きな値を示した。また、当年稈では大きく、2年生から7年生までは小さな値で安定した後、9年生で再び大きな値を示した。細胞壁の形成が完了した9年生のミクロフィブリル傾角が2~7年生に比べて大きな値を示しており、成長に伴う細胞壁の厚壁化の他に細胞壁マトリクス成分の構造変化など他の要因がミクロフィブリル傾角の変動に関与している可能性が考えられる。 また、竹独自の新規材料化につなげるため、筍皮に含まれる抗菌成分を極性の異なる溶媒を用いて段階的抽出し、それぞれの抗菌活性を測定した。その結果、今回得られた抽出物の全てに黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性が確認された。最も強い抗菌活性を示したものは、ノルマルヘキサン抽出物とジクロロメタン抽出物であった。これらの成分を用いることで竹独自のセルロースナノ複合材料の開発につながると考えられる。
|