研究課題
本研究の内容は、竹を中心とした未利用の草本バイオマス資源の新規利用システムの構築(セルロースナノファイバー化)を目指して、植物学解析の観点からの細胞壁構造の解析と、それに基づく均一ナノファイバー製造およびナノファイバー複合材料の開発を行うものである。2年目は当初の計画通り、成長ステージに応じた最適な物理的解繊手法の開発を目指して研究を行った。具体的には、成長ステージの異なる竹材(未成熟材・全長:0.3 m、2 m、10 mおよび成竹)からセルロースを精製し、軽微な機械解繊処理(超音波ホモジナイザー)により解繊の程度がどのように異なるかについて検討した。製造したナノファイバーを用いて作製したシートの表面のSEM観察からは、成竹から製造したシート表面には太いパルプ繊維が確認されたのに対し、伸長成長初期の材においては未解繊のパルプ繊維は消滅しており、ナノ解繊に成功していることが確認された。また、TGAを用いた熱重量測定においても伸長成長初期のものが最も分解温度が高く、性能が高いことが明らかになった。これまで未利用資源であった未成熟竹材の新たな利活用法としてナノファイバー化が有効である可能性が考えられる。また、竹と同じ単子葉類に属するアブラヤシ・パーム搾油残渣からのセルロースナノファイバー製造を行い、果肉部や種子殻部といった原料の部位による違いが製造後のセルロースナノファイバーの性能にどのような影響を与えるのかについて検討を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度は「成長ステージに応じた最適な物理的解繊手法の開発」を目指して、様々な成熟度の竹材からのセルロースナノファイバー製造を試みた結果、これまで未利用資源であった未成熟竹材の新たな利活用法としてナノファイバー化が有効である可能性が見いだされた。さらに、竹と同じ単子葉類に属するアブラヤシ・パーム搾油残渣からのセルロースナノファイバー製造についても検討を行い、竹材のみならず広く大型草本類由来のセルロースナノファイバーに対する新規の知見を得ることができたため。
今後は竹材および大型草本類特有の性能を活かした独自のセルロースナノファイバーおよび複合材料の開発のため、細胞壁構造および構成成分の違いが与える影響についてのみならず、セルロースナノファイバーと樹脂との相互作用の解明についてなど、基礎的な知見の集約を目指す。高分子材料を専門とする工学分野の研究者からの協力も受けながら研究を推進していく予定である。
残金2円のため、次年度の物品購入に用いる予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件)
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