本研究の内容は、蓄財の新規利用システムの構築を目指し、竹の急激なリグニン堆積過程における細胞壁構造の解析とそれに基づく高性能セルロースナノファイバー製造手法の開発を行うものである。 最終年度は2年目までに行った、成長過程における竹材からのセルロースナノファイバー製造に加え、成長後の竹齢の異なる材からのナノファイバー製造と細胞壁構造の解析を行った。竹材は成熟度、竹齢により材質が変化することが知られており、竹齢が3-5年生のものが高強度で良質とされ、その年代のものを選別して建築や道具として使用される。一方で、それ以外の竹齢では建材や工芸への利用は少なく、放置竹林など竹齢の不明な材の利用拡大は期待できない。そこで、未利用竹材の有効利用の観点から、異なる竹齢の材(0.5~12.5年生)からセルロースナノファイバー製造を行い、特性評価を行った。試験に用いた全ての竹齢の材からセルロースナノファイバーが製造可能であった。全ての試料において耐熱性には差がなかったものの、ナノファイバーシートの引張強度に差がみられたことから重合度や結晶化度について詳細な分析を行っている。 また、竹齢が材質へ与える要因について明らかにするため、細胞壁構成成分であるリグニンの化学構造解析と動的粘弾性試験を行った。竹齢の変化によって、リグニンの構造に変化が生じるとともにその傾向は部位(内皮側・外皮側)によって異なる可能性が示唆される結果が得られた。竹材の加齢による材質の変化に、リグニンの微細な構造変化が影響している可能性が考えられる。
|