脳血管障害に対する経頭蓋磁気刺激による運動機能・認知機能の改善を健側高頻度刺激及び患側低頻度刺激に分けて評価し、比較した。 本研究では、 血管障害のリハビリテーション治療として注目されている反復頭蓋磁刺激(rTMS)の効果のメカニズムの解析を目標とする。 血管障害にしては、患側高頻度rTMSと健常側低頻度rTMSが有効とされるが、その詳細は明らかになっていない。 錐体路の神線繊維の減少を認めた脳梗塞モデルを患側高頻度rTMS群と健常側低頻度rTMS群に分け、介入を行うプロトコルを作成した。動物モデルの作成や動物モデルへの確立されているrTMSの手技を確認し、動物実験の準備を行った。私の異動やCOVID19の影響で、MRIや生化学的検査などの追加解析の実施が困難となったため、ヒトにおける臨床研究を小数例で実施した。こちらも両群間で運動機能の改善効果に差は認めなかったが、同様に患側高頻度rTMSを実施した群の方が、健側低頻度rTMS群より運動機能の改善効果は大きい傾向にあった。また、患側高頻度rTMSは、上肢機能の改善が下肢機能よりも著しく大きく、Fugl-Meyer Assessment(FMA)では、共同運動と関連する項目で改善が大きく、感覚は改善が小さい傾向にあった。また、肩関節や肘関節など比較的大きな関節の運動にて改善が大きかった。後の解析にて、FMA上肢機能のみで患側高頻度と健側低頻度を比較すると、明らかに患側高頻度は運動機能の改善効果が強かった。実施中の有害事象は認めなかった。 本研究にて患側rTMSの神経機能改善効果が示されたが、慢性期の症例がほとんどいなかったため、急性期の症例に対する効果として捉える必要がある。 日本神経治療学会及び日本リハビリテーション医学会にて結果の一部を発表した。
|