本研究のテーマである小児期に臓器移植を行った患者の長期フォローアップに向けたデータベースの確立に際しては、人工知能(artificial intelligence:AI)が不可欠な技術であるため、医療の中でも特に看護の領域におけるAIの実用性についてsystematic reviewを行い、医療情報をテーマとする英文誌にて成果の公表を行った。reviewにより、調査時時点でAIを用いた看護の領域の研究は17件抽出され、machine learningやsupport vector machin、artificial neural networkが用いられていることが明らかとなった。また、AIは、患者の自己報告に基づいた抑うつの予測や医療施設における事故の発生の予測等に際し実用性を有していることが明らかとなった。ただし、診療データをAIが用いる際には自然言語処理等を用いた解析が可能なデータセットであることが課題となっていることも明らかとなった。これらのことから、小児期に臓器移植を行った患者の長期フォローアップに際し、AIは基幹となり、AIによる解析が可能なデータセットとデータベースの構築の必要性が確認されため、reviewにより明らかとなった事項を踏まえた構築の準備を進めている。本研究の対象者である臓器移植患者は、免疫抑制療法を行なっていることから新型コロナウイルス感染症の流行に伴う治療上および生活上大きな影響を受けている。加えて、患者の診療を行う共同研究施設となっている医療機関も診療上の大きな困難が生じており、本研究の計画にも大きな影響が生じるほどであった。本研究のテーマである長期フォローアップシステムが確立することで、例えばパンデミックのような大きな問題が生じた際にも臓器移植患者への迅速かつ的確な支援が可能となると考えられる。
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