研究課題/領域番号 |
17K17852
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
嶋田 圭祐 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (60779601)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 精子ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
KOすると精子ミトコンドリアの局在異常を引き起こす遺伝子をSmdr1と名付けてその機能を調べることで精子ミトコンドリアの中片部局在メカニズムを解析している。 本年度は新たにFLAGタグをSmdr1に付加したKIマウスを作製し,その発現を明らかにした。さらにKOマウスを用いた表現型解析では不妊となる原因及び精子ミトコンドリアに見られる表現型を詳細に解析することができた。 FLAGタグを付与したKIマウスの精巣を免疫染色して解析してみるとこの遺伝子は精子形成期のステップ10あたりから発現が認められることが分かった。さらにKOマウス精巣の電子顕微鏡観察からは精子形成期のステップ15において,通常ミトコンドリアは球状の状態で鞭毛に沿って整列したのちにミトコンドリアが伸長し,鞭毛周辺にタイトに巻き付くことでミトコンドリア鞘を作るが,KOマウス精子では球状のミトコンドリアの整列まではうまくできているもののミトコンドリアが鞭毛に沿ってタイトに巻き付くことができなくなっていることが分かった。このことから精巣上体尾部で見られるミトコンドリアが鞭毛から抜けていたり屈曲しているなどの表現型は精子が精巣上体を移動している際に生じる二次的な変化であることが分かった。つまりSMDR1は精子ミトコンドリアがミトコンドリア鞘を作るためにタイトに巻き付くのに重要な役割を果たしていることが明らかになった。 またKOマウスの不妊の原因を調べるとKO精子は運動性が低下しており,雌との交配後にKO精子は子宮卵管結合部(UTJ)を通過できないことが分かり,これが不妊の原因となっていることが明らかになった。 また培養細胞を用いた研究からはSmdr1の過剰発現によりミトコンドリアが凝集し,ミトコンドリアが球状を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞を用いた研究はこのタンパク質がミトコンドリアの形態を球状にすることで凝集を引き起こしていることを明らかにしたが,他にどういった因子が関わってこの凝集がおこっているかはまだ分かっていない。 KIマウスは予定通り作製し,付加したFLAGタグの検出はうまくできた。そのためこのタンパク質の発現時期は明らかになり精子ミトコンドリアが鞭毛に巻き付く前からミトコンドリアと共局在していることが分かった。しかしこのタンパク質は発現量が少ないのか,相互作用するタンパク質は今のところ見つかっていない。 KOマウスの表現型解析は当初の予定よりも早いペースでかなり詳しいところまで解析することができ,このタンパク質がミトコンドリア鞘の形成に大きく関わっていることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究における最大の目標は精子中片部の形成に大きく関わっていることが明らかになったSMDR1の分子機能の解明と他に関わっているであろう因子を探すことにある。 KOマウスの解析からin vivoでのSMDR1の役割はほぼ掴めたが,分子機能を明らかにするためにはin vitroの解析が必要不可欠である。今後はin vitro解析を通してこのタンパク質の分子機能を明らかにしていく。 精子中片部形成において他に関わっている因子の探索には培養細胞・KIマウスの両方からのアプローチができるので,両方のサンプルを用いて相互作用しているタンパク質を質量分析等を用いておこなう。
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