研究課題/領域番号 |
17K17853
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小西 聡史 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (10789564)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 粘液繊毛クリアランス / 多繊毛協調運動 / 疾患モデルiPS細胞 / ライブセルイメージング |
研究実績の概要 |
呼吸器中枢気道に分布する繊毛上皮細胞による、宿主防御に重要な粘液繊毛クリアランスの異常は、多くの気道疾患と関わり、in vitro での疾患モデリングの確立は重要である。初代培養細胞を用いた実験系では「後天的な障害を受けていない大量の細胞の準備」、「一方向性の粘液流を生み出す細胞間の繊毛協調運動の確立」は難しく、研究代表者はヒトiPS 細胞から気道繊毛上皮細胞の分化誘導法を確立し、前者について解決できたが、後者に関しては未だ達成できていない。本研究は、(1)ヒトiPS 細胞由来の気道上皮細胞における細胞間の繊毛協調運動の確立、(2)ライブセルイメージングを用いた細胞間の繊毛協調運動の形成過程のメカニズムの解明、を柱としてin vitro での気道上皮細胞シート上の一方向性の粘液繊毛クリアランスの確立を目的とする。研究実績としては(1)に関しては、多繊毛協調運動が阻害される疾患の解析のため、京都大学で開発された原発性繊毛機能不全症の疾患モデルiPS細胞(CRISPR-CAS9システムを用いて疾患原因遺伝子をノックアウトした細胞)から分化誘導した気道繊毛上皮細胞シートを用い、ハイスピードカメラによる繊毛運動パターン解析と蛍光ビーズの細胞シート上の動態解析を行い一細胞/複数個の細胞集団レベルでの機能の表現型を抽出できた。(2)に関しては、大阪大学月田研究室で確立された気道繊毛上皮細胞のライブセルイメージング系を用いて、繊毛の根元の構造である基底小体と繊毛の動きの向きを規定するBasal Footのそれぞれの蛋白質を蛍光ラベルしたトランスジェニックマウスの初代培養の気道基底上皮細胞から分化誘導した気道繊毛上皮細胞シートに対して超解像顕微鏡を用いてライブセルイメージングを行い一細胞レベル/複数個の細胞集団レベルでの気道繊毛上皮細胞の多繊毛協調運動の確立過程を確認しながら解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画では、(1) ヒトiPS 細胞由来の気道上皮細胞における細胞間の繊毛協調運動の確立と(2)ライブセルイメージングを用いた細胞間の繊毛協調運動の形成過程の解析によるメカニズムの解明、を研究期間内に明らかにすることを目的として研究を行っている。(1)に関しては、多繊毛協調運動が阻害される疾患の解析のため、京都大学で開発された原発性繊毛機能不全症の疾患モデルiPS細胞(CRISPR-CAS9システムを用いて疾患原因遺伝子をノックアウトした細胞)から分化誘導した気道繊毛上皮細胞シートを用い、ハイスピードカメラによる繊毛運動パターン解析と蛍光ビーズの細胞シート上の動態解析を行い一細胞/複数個の細胞集団レベルでの機能の表現型を抽出できたが、多細胞間の繊毛協調運動の確立のための検討は、健常人ドナー由来の細胞シート内で局所的に平面極性因子Vangl1の揃いが確認できた実験結果のみで細胞シート全体での協調運動は、未確認である。(2)に関しては、大阪大学月田研究室で確立された気道繊毛上皮細胞のライブセルイメージング系を用いて繊毛の根元の構造である基底小体と繊毛の動きの向きを規定するBasal Footのそれぞれの蛋白質を蛍光ラベルしたトランスジェニックマウスの初代培養の気道基底上皮細胞から分化誘導した気道繊毛上皮細胞シートに対して超解像顕微鏡を用いてライブセルイメージングを行い、一細胞レベル/複数個の細胞集団レベルでの気道繊毛上皮細胞の多繊毛協調運動の確立過程を解析中である。多繊毛協調運動に内因性に関わる可能性のある因子として微小管・ケラチンは、ライブイメージング実験に蛍光免疫染色評価もあわせて行い、外因性に関わる因子として、Notchシグナルに介入した結果も解析中である。解析は順調に進行中だが、最終目的の細胞シートレベルの多繊毛協調運動形成は未確認であり、上記と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本計画では、(1) ヒトiPS 細胞由来の気道上皮細胞における細胞間の繊毛協調運動の確立と(2)ライブセルイメージングを用いた細胞間の繊毛協調運動の形成過程の解析によるメカニズムの解明、を研究期間内に明らかにすることを目的として研究を行っている。(1)に関しては、京都大学で開発された原発性繊毛機能不全症の疾患モデルiPS細胞から分化誘導した気道繊毛上皮細胞シートを用い、ハイスピードカメラによる繊毛運動パターン解析と蛍光ビーズの細胞シート上の動態解析を行い一細胞/複数個の細胞集団レベルでの機能の表現型を抽出できた。しかし、実際の細胞シートレベルでの多繊毛協調運動が未確立であり、マイクロデバイスを用いてメカニカル刺激を加えた培養での細胞間の多繊毛協調運動形成の可否に関しても検討することで推進をはかる。(2)に関しては、大阪大学月田研究室で確立された気道繊毛上皮細胞のライブセルイメージング系を用いて、繊毛の根元の構造である基底小体と繊毛の動きの向きを規定するBasal Footのそれぞれの蛋白質を蛍光ラベルしたトランスジェニックマウスの初代培養の気道繊毛上皮細胞シートに対して超解像顕微鏡でライブセルイメージングを行い一細胞レベル/複数個の細胞集団レベルでの多繊毛協調運動の確立過程を解析中である。嚢胞性線維症患者の初代培養気道上皮細胞が、Notchシグナル阻害により損なわれた平面極性因子を再確立する既報(Vladar EZ, et al, JCI insight, 2017.)もあり、ライブセルイメージング中にNotchシグナルに介入した結果を検討して、(1)に敷衍できるか確認する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ヒトiPS細胞由来気道繊毛上皮細胞の分化誘導と、ライブイメージング用のトランスジェニックマウスの初代培養細胞の気道繊毛上皮細胞への分化誘導培地が基本培地を同じくしており、その培地と、細胞を培養するのに双方で用いるトランスウェル、添加因子、といった細胞の分化誘導・維持培養するための消耗品に使用予定です。
|