研究実績の概要 |
小型海水魚を多数匹・長期間飼育可能な海水水槽設備を構築して、実験の測定試料となるオヨギイソハゼの飼育を行った。飼育水中のセシウムとストロンチウムの濃度を45日かけて上げていき、セシウムは5.6×10^-4 mol/L、ストロンチウムは8.4×10^-5 mol/Lまで上昇させた。この飼育水の状態で2週間飼育し、その後、部分的換水を繰り返すことでセシウム・ストロンチウム濃度を下げていった。換水に大量の人工海水が必要なため、当初の想定より濃度の減少速度が緩やかになった。この飼育期間中に1週間に1匹の頻度でオヨギイソハゼを捕獲し、液体窒素を用いて過冷却したn-ヘキサンに含浸させて凍結試料を作成し、-80℃のディープフリーザーで順次保管した。 セシウム濃度が最大となっている期間に捕獲したオヨギイソハゼの凍結試料を用いて、クライオスタット(CM1520, Leica BIOSYSTEMS)により凍結切片を作成した。この凍結切片をMALDI-TOFの質量分析装置(Ultraflex, Bruker)でバルク分析し、オヨギイソハゼに含有しているセシウムが検出できることを確認した。 次年度以降に元素分布を測定するためのイメージング質量分析装置について、イオン化用のレーザーを照射する光学系を見直して、より均一にレーザーが照射できるように回転式ディフューザーと方形コア光ファイバーを用いたビームホモジナイザーシステムの調整を行い、600μm×600μmの矩形領域へ均質にレーザーを照射して高精細なイオン像を得ることに成功した。
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