研究課題/領域番号 |
17K17862
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福田 庸太 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20783179)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 結晶構造解析 / 生物無機 |
研究実績の概要 |
本研究では、主として構造生物学的手法を用い、新規なブルー銅タンパク質(Blue Copper Protein: BCP)についての知見を得ることを目的としている。具体的には以下の3点である。1)タンデム型BCP(Tan-BCP)の構造機能解析、2)電子伝達以外の機能をもつかもしれない新奇なBCP(CinA)の構造機能解析、3)新しい人工BCP酵素(sNIR)の構築 1) Tan-BCPは膜貫通へリックスを有するが、本研究はBCPドメインに着目するため、可溶性のタンデムBCPドメインのみの発現・精製を試みた。可溶化率を上げる目的でSUMOタグとタグ切断用のTEVプロテアーゼ認識サイトを付加したコンストラクトを構築し、可溶性タンパク質としての発現に成功した。しかしながら、クロマトグラフィーによる精製を経ても純度が向上せず、また、銅部位に銅が取りこまれにくいことが明らかとなった。 2) マルトース結合タンパク質(MBP)タグをN末端またはC末端に付加したコンストラクトを発現・精製し、結晶化をおこなった。MBPタグ無しのコンストラクトと比べ、結晶核の発生率が有意に高まったが、構造解析可能なサイズの結晶の取得には至っていない。また、Tan-BCP同様、今回のコンストラクトでは銅部位に銅が取りこまれにくく、そのことが均質なサンプルの取得を妨げている可能性が考えられた。 3) 人工BCP酵素の鋳型として数種類の銅含有亜硝酸還元酵素(NIR)のN末ドメイン(sNIR)を組換タンパク質として大腸菌内で発現させた。そのうちAxNIRのN末ドメインのみが可溶性タンパク質として発現することが明らかになったが、結晶化条件の最適化には至っていない。おそらく柔軟性の高いN末端部位が結晶化を妨げていると考えられるが、N末部位を削除したコンストラクトは不溶性であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・Tan-BCP 可溶性タンパク質としての発現に成功したものの、結晶化に必要な純度のサンプルが得られない、銅部位が構築されていないことが明らかになった。 ・CinA MBPタグをN末端またはC末端に付加したコンストラクトを用いて結晶化には成功し、計画のとおり、MBPタグ無しのコンストラクトと比べ、結晶核の発生率が有意に高まることもわかったが、構造解析可能なサイズの結晶の取得には至っていない。また、Tan-BCP同様、銅部位に銅が取りこまれにくいという問題点も明らかになった。 ・sNIR 人工BCP酵素の鋳型として数種類の銅含有亜硝酸還元酵素(NIR)のN末ドメイン(sNIR)を組換タンパク質として大腸菌内で発現させた。そのうち最も素性の良かったAxNIRのN末ドメインの精製には成功したが、結晶化条件の最適化には至っていない。柔軟性の高いN末端部位が結晶化を妨げていると考えられるが、N末部位を削除したコンストラクトは不溶性であった。
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今後の研究の推進方策 |
・Tan-BCP 精製条件の検討、および、銅部位の再構築手法を検討する。タグを除き、不溶性画分として発現させたのち、銅存在下でのリフォールディングも検討する。 ・CinA 構造解析可能なサイズの結晶を得るため、シーディング法等を検討する。 ・sNIR 結晶化による構造の可視化を後回しにし、D98M sNIR変異体を作製し、PHMのような酵素活性を持つかを調べる。分光学的測定から、構造的な面や電子状態の面からD98M sNIRがPHMを模倣できているかを確かめる。さらに、ブルー銅周辺の残基に変異を加え、得られた変異体のキャラクタリゼーションもおこなう。
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