本研究では、主として構造生物学的手法を用い、新規なブルー銅タンパク質(Blue Copper Protein: BCP)についての知見を得ることを目的としている。具体的には以下の3点である。1)タンデム型BCP(Tan-BCP)の構造機能解析、2)電子伝達以外の機能をもつかもしれない新奇なBCP(CinA)の構造機能解析、3)新しい人工BCP酵素(sNIR)の構築。 1) Tan-BCPは可溶性タンパク質としての発現に成功したが精製の純度が低い、透析などの条件を変えても銅部位が再構築されず、不均一なサンプルを用いて結晶化を試みたが結晶は得られなかった。2) マルトース結合タンパク質(MBP)タグをN末端またはC末端に付加したコンストラクトを発現・精製し、結晶化をおこなった。MBP無しのコンストラクトと比べ、結晶核の発生率が有意に高まったが、構造解析可能なサイズの結晶の取得には至らなかった。MBPありコンストラクトの時は銅部位が構築されにくかった。3) 人工BCP酵素の鋳型として数種類の銅含有亜硝酸還元酵素(NIR)のN末ドメイン(sNIR)を組換タンパク質として大腸菌内で発現させた。そのうち最も素性の良かったAxNIRのN末ドメインの精製には成功したが、結晶化条件の最適化には至っていない。柔軟性の高いN末端部位が結晶化を妨げていると考えられるが、N末部位を削除したコンストラクトは不溶性であった。 以上、当初の計画で扱う予定だったタンパク質群の素性が芳しくなかったため、計画には無かったが、CPRバクテリアという特殊なバクテリアが持つBCPの発現と精製もおこなった。その結果、CPR-BCPとCPR-NIRというタンパク質の精製に成功し、CPR-NIRについてはキャラクタリゼーションと結晶構造解析もおこない、既知のNIRと性質も構造も異なる新奇なタンパク質であることを明らかにした。
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