本研究課題は新自由主義的な教育改革が学校教員に与える影響を検討するものである。関西地区の学校教員に対するインタビュー調査や質問紙調査を通じて、新自由主義的な改革が教員文化に与える影響やその帰結を実証的に吟味することを目的としている。 研究計画一年目はインタビュー調査やその成果の整理を行い、二年目に一年目の結果を踏まえて質問紙調査を計画・実施、最終年度の三年目にそれまでの調査結果を踏まえた総合的な考察を行うことが本課題の研究全体の概要である。 分析作業としては、1)中学校教員へのインタビューデータの分析と、2)関西地区の中学校教員への質問紙調査からえられたデータを吟味し、研究全体として次のような知見を提出した。1)については、インタビューデータを通じて、改革により大阪市の中学校教員が置かれている状況や葛藤を深める様子を記述し、改革の影響として、管理統制の強化、裁量権の低下、成果・競争主義の要請を整理した。さらにこれらの要因が、教員たちの働きがいの低下や、アイデンティティのゆらぎをもたらしていることを指摘した。 2)については、関西7自治体の中学校教員、合計934名の質問紙データが得られた。このデータは、新自由主義的な教育改革が進められている最中の貴重なデータと言える。分析は今後より深めていく予定であるが、教員の新自由主義的な教育改革に対する支持/不支持の態度の様態や、改革の中での葛藤や悩みを計量的に把握することができた。今後は、支持/不支持を左右する要因や、特に改革が早急に行われた大阪市の教員に対する改革の特異な影響を吟味する予定である。 本研究では、これまで実証的な検討が乏しかった新自由主義的教育改革の影響を教員のインタビュー・質問紙データから検討した点に重要な意義があると考える。今後は、欧米との比較や教員文化論への示唆など、より理論的な観点を含めた学術的示唆を行っていく。
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