研究課題/領域番号 |
17K17867
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久保 浩樹 大阪大学, 国際公共政策研究科, 助教 (40789559)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分極化 / イデオロギー / 政党 / アメリカ / 比較政治 / サーベイ / 計量分析 |
研究実績の概要 |
政党システムのイデオロギー的分極化は、世界各国で、どのように、なぜ、異なっているのだろうか?これが、本研究で解明する課題である。分極化(polarization)とは、主として現代アメリカ政治において、民主党がリベラル化し、共和党が保守化することで、二大政党のイデオロギー的距離が拡大していく現象を表す言葉として用いられる。現代のアメリカではイデオロギー的分極化や党派的対立が深刻化していることは広く知らている。民主党と共和党のイデオロギー的対立の激化は、政治的妥協を困難にさせ、政策過程の停滞や政治不信の増大にもつながるとされている。
しかしながら、アメリカの分極化の一国研究は数多いのに対し、分極化を比較論的に分析する研究は少ない。そこで本研究では、現代アメリカで進行しているとされるイデオロギー的分極化を、アメリカ固有の現象としてみなすのではなく、世界各国に共通して見られる普遍的な現象として理解することを目標として、多国間比較分析と計量的手法を用いて分析することを目標とした。「イデオロギー」という多義的・曖昧な概念を多国間比較可能な形で計量的に分析することは、統計学やデータ分析にも貢献できると同時に、政治的対立やイデオロギー的分断を特殊一国的な現象として理解ではなく、各国に共通性をもち、各国との比較の中で論じることを可能にするという意味で、政治学、比較政治学全般にも貢献しうると考える。
また、政党のイデオロギー的対立の激化は、政治的妥協を困難にさせ、政策過程の停滞や政治不信の増大にもつながるとされている。アメリカの国内における政治対立の激化や政策の停滞は、日本を含む世界全体の国際政治に大きな影響を与える。それゆえに、アメリカの分極化の原因を解明することはアメリカの理解にも世界政治や日米関係の理解にも必要不可欠であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標としては、多国間比較可能なイデオロギーデータの構築が、本研究の最大の重要課題であった。具体的には、 「各国の分極化がどの程度異なっているのか?」という問い に答えられるように、分極化の国際指標のデータを構築し、各国の分極化の違いを抽出できるようにする。政党や有権者が左右イデオロ ギーのどこに位置するのかを比較可能な尺度で測定することが不可欠であるが、有権者のサーベイエラーを取り 除く計量政治学的手法を用いて有権者のイデオロギー尺度に存在するサーベイエラーを除去する。応募者はすで に国際的な有権者サーベイであるComparative Study of Electoral Systems (CSES)を対象に用いて分析し、多 国間比較可能なイデオロギーデータを作成した。この研究成果を土台に、有権者と政党の多国間比較可能 な分極化指標を作成し、世界各国の分極化のパターンを数値化した。また、この作成したデータに政党や政治エ リートの戦略的行動や有権者への支持獲得戦略などを数値化しデータセットの一部に組み込み、こ のデータセットの構築を最優先とした。作業は順調に進み、予定どおり分析可能なっデータセットの構築を終了した。
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今後の研究の推進方策 |
二年目ではさらにデータセットの拡張をしつつ、海外の研究協力者との連携をもとに、選挙区レベルのデータや 議員や政党、政治的エリートの行動や認識に関するデータを拡充する。またイギリスのエセックス大学のロイス ・キャロル准教授やマンハイム大学のニック・リン研究員と連携しつつ、各国の政党や選挙制度、選挙区事情に 関するデータを引き続き収集する。また研究成果は日本及び海外の学会報告を通じて発表する。日本では日本政 治学会、アメリカ学会、日本選挙学会、日本比較政治学会などでの発表を予定している。海外ではAmerican Pol itical Science Association, Midwest Political Science Association, European Political Science Associ ationなどでの発表を予定している。さらには、有権者と政党のイデオロギーと分極化の多国間比較に関するデータの分析を進めると同時に、研究成果を順次公 表していく。研究成果の一部はグラフや視覚的素材を作成して申請者のウェブサイトで一般の方々や専門外の方 々にもわかりやすいように閲覧可能にする。また研究成果は英語論文として海外の定評のある政治学分野に関す る国際的ジャーナルに投稿することを最優先とする。また、研究の総決算として、 現代の民主主義国家において、イデオ ロギーの持つ意味と重要性、イデオロギー的対立が各国ごとによってどのように質的(内容)にまた量的(程度 )に異なり、政党政治や選挙政治を特徴づけているかを展望する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、ほぼ予定どおりに使い切りましたが、わずかに余ってしまいました。翌年度は物品費や消耗品の補充に充てたいと思っております。
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