政党システムのイデオロギー的分極化は、世界各国で、どのように、なぜ、異なっているのだろうか?これが、本研究で解明する課題である。分極化(polarization)とは、主として現代アメリカ政治において、民主党がリベラル化し、共和党が保守化することで、二大政党のイデオロギー的距離が拡大していく現象を表す言葉として用いられる。現代のアメリカではイデオロギー的分極化や党派的対立が深刻化していることは広く知らている。民主党と共和党のイデオロギー的対立の激化は、政治的妥協を困難にさせ、政策過程の停滞や政治不信の増大にもつながるとされている。
しかしながら、アメリカの分極化の一国研究は数多いのに対し、分極化を比較論的に分析する研究は少ない。そこで本研究では、現代アメリカで進行しているとされるイデオロギー的分極化を、アメリカ固有の現象としてみなすのではなく、世界各国に共通して見られる普遍的な現象として理解することを目標として、多国間比較分析と計量的手法を用いて分析することを目標とした。「イデオロギー」という多義的・曖昧な概念を多国間比較可能な形で計量的に分析することは、統計学やデータ分析にも貢献できると同時に、政治的対立やイデオロギー的分断を特殊一国的な現象として理解ではなく、各国に共通性をもち、各国との比較の中で論じることを可能にするという意味で、政治学、比較政治学全般にも貢献しうると考える。
また、政党のイデオロギー的対立の激化は、政治的妥協を困難にさせ、政策過程の停滞や政治不信の増大にもつながるとされている。アメリカの国内における政治対立の激化や政策の停滞は、日本を含む世界全体の国際政治に大きな影響を与える。それゆえに、アメリカの分極化の原因を解明することはアメリカの理解にも世界政治や日米関係の理解にも必要不可欠であると考えられる。
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