昨年度までに引き続き、教員養成の学生を対象とした問題行動を起こりにくくする能動的な学級経営法のトレーニング講座を行い、その効果を検討した。現在、2019年度から2022年度までに行ったRCTによる効果研究のデータを統合しての結果分析を行い、論文にまとめているところである。 また、以前に行った準実験による効果検討に関して、昨年度学校心理学会に投稿をしたが、再審査の結果、不採択となった。査読では効果指標である教師効力感を測定する尺度について問題点を指摘されたため、改めて尺度の信頼性を検討するためのデータ分析を行った。これまでのデータを統合したところ、一定の信頼性が確認されたため、次年度の教育心理学会において発表をする予定である。不採択となった効果研究の論文については、指摘された内容を修正し、次年度発行の大学紀要に投稿した。 これまでのデータから、教員養成課程の学生に対する能動的な学級経営法のトレーニングにより、学級経営の方略を使用することへの効力感、学級経営の肯定的な結果に対する効力感が上昇するなど、トレーニングの一定の効果が確認されている。しかし、具体的なトレーニングの内容とこれらの効力感の関連は十分に明らかでなく、また効果の指標としてこれらの効力感尺度が適当かどうかについても今後さらに検討する必要がある。トレーニング内容については、学生の自由記述による感想とトレーニング中の観察を元に、ロールプレイのシナリオに一部変更を加えた。講座に対する学生の評価(教員として勤務するうえで役立つ)は概して高く、不安が少しなりとも解消したとの声も多く聞かれている。通常学級に在籍し学習・行動面で困難を示す児童生徒の割合が8.8%とされることからも、着任後から教室で遭遇するかもしれない困難に対応するための具体的な手立てを大学において学んでおくことには意義があると思われる。
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