本研究は1980年代以降の積極的な経済自由化政策及びグローバル化戦略にもかかわらず、現在まで低成長にとどまっている、いわゆる「メキシコ経済発展のパラドックス」について、2010年代のメキシコにおける日系自動車産業の進出ラッシュの背景に地場産業の脆弱性があることに鑑み、日系自動車産業をケーススタティとして、その要因を解き明かすことを目的とした。具体的には、メキシコ経済およびメキシコの自動車産業に関するデータを用いて全体的な傾向を分析するとともに、2018年度、2019年度には夏季休暇期間を利用してメキシコでの現地調査を行い、主に日系自動車産業が集積する中西部グアナファト州およびアグアスカリエンテス州において企業関係者に対し、聞き取り調査を行った。 同時に、2018年度、2019年度はジェトロ・アジア経済研究所の外部委員を務め、上述の現地調査及び同研究所での議論をもとに、『ラテンアメリカ・レポート』誌に2本の学術論文を発表した。その他、研究期間全体を通して英語単著1編、英語査読論文1本、分担執筆1章、学会・セミナー発表9件(うち国際学会等発表2件)の成果を得た。 最終年度(2020年度)については、コロナ禍により参加予定の国際セミナーが中止された上、大学の全面オンライン授業化等の教育負担の増大やメキシコでの現地調査の取り止め等の影響により、成果は1件にとどまった。2021年2月に国際シンポジウム「第2回日コロキアム」においてコロナ禍以前及び以後のメキシコ自動車産業及び日系自動車産業の最新動向を報告した。本報告はワーキングペーパーとして2021年5月に公表される予定である。 コロナ禍を境に、メキシコにおける日系企業進出ブームも終わりを告げ、自動車産業をはじめメキシコ経済はポストコロナの新局面を迎えており、今後も新たな科研費プロジェクトを申請し、更なる研究を続けていく予定である。
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