本研究では,生徒の学習意欲を促す体育授業における動機づけ雰囲気について,横断的・縦断的な調査による量データと授業介入による実践的な質データを相互補完的アプローチから検討することを目的としている.本研究を推進させることによって,①生徒の学習意欲を促す体育授業における動機づけ雰囲気について解明できる,②学習意欲の低下を回復・向上させる授業設計や指導方法について,成長段階ごとの特徴が明らかにできる,③中学校3年間を通して学習意欲がどのように変動するのかについて解明できる.さらに,これらの知見をベースに考察を進めることによって,教育現場に実際的な知見を示すことができ,学習意欲向上を意図する指導への一助になることが期待される. 今年度は,縦断データを再分析し,体育授業における学習意欲ならびに動機づけ雰囲気,目標志向性に関して中学校3年間の縦断データ(9波のパネルデータ)はこれまでに類のない貴重なデータと言える.3年間の体育における学習意欲に関して成長曲線モデルを用いた分析結果は,学習を促進する意欲的側面の得点は横ばい傾向であり,従来の研究知見を支持するものであった.一方で,学習を抑制する回避的側面の得点は低下傾向が認められ,これまでの横断研究では明らかにできなかった新知見と言える.さらに学習意欲と動機づけ雰囲気との関連について成長曲線モデルを組み合わせた分析を進めたところ,熟達・協同雰囲気が意欲的側面を維持・向上し,回避的側面を抑制することが確認された.また遅れが生じていた実践的研究に着手することができ,実践の期間や計画を再考しながら,体育授業における実践研究を遂行することができた.実践研究を学術論文として完成させた.最終データの解析を進め横断的・縦断的研究と実践的研究から得た知見を総合的に考察することができた.
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