研究実績の概要 |
【研究計画】体温調節行動を修飾するエストラジオールの冷受容分子TRPA1、TRPM8 への影響を調べる為、卵巣摘出ラット、エストラジオール投与ラットにTRPA1、TRPM8作動薬(シナモアルデヒド、メントール)を塗布し、体温調節反応を検討した。若年女性において月経周期の冷受容分子TRPM8を介した温熱的不快感と体温調節への影響を調べる為、TRPM8作動薬を塗布し、足背、足指の皮膚温、皮膚血流量、鼓膜温、血圧、温熱感覚、温熱的快適感について、月経期、早期卵胞期、黄体期の3期で比較した。【研究成果】雌ラットにおいて、エストラジオールはメントール塗布時の体温上昇を減弱させたが(Uchida et al., 2018, J Thermal Biol)、シナモアルデヒド塗布時の尾部皮膚温低下に影響しなかったことから(Uchida et al., 2019, J Thermal Biol)、エストラジオールはTRPA1ではなく、TRPM8を介した体温調節に影響することが示唆された。そこで、女性において、機械的冷却及びメントール刺激に対する月経周期の影響を検討した。機械的冷却時、若年女性において黄体期より早期卵胞期(高エストラジオール濃度)のみ足趾皮膚温が上昇したことから(Uchida et al.,2019, J Physiol Sci)、月経周期が寒冷時に足趾皮膚温調節に影響することが示唆された。また、若年女性において月経周期中の早期卵胞期は、月経期や黄体期より、メントール塗布時の足趾皮膚温変化量が低下すること、また早期卵胞期のみメントール塗布箇所が寒くて不快と申告することを明らかにした(Uchida et al., J Thermal Biol, in press)。本研究により、女性の月経周期は末梢温度受容分子TRPM8を介した体温調節に影響すること、そのメカニズムに高エストラジオール濃度が関与することが示唆された。
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