研究課題/領域番号 |
17K17883
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
市村 真祐子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (20759021)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / 食品機能 / オウバク / コレステロール / モデル動物 |
研究実績の概要 |
肝臓におけるコレステロール-胆汁酸代謝の何らかの障害が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の発症に関与していると考え、それを正常化してNASHを予防・治療することを目的として研究を行った。本年度の研究成果は以下の通りである。 1) コレステロールおよび胆汁酸代謝促進作用を有する食品の探索:まず、文献的探索を行い、食品・医薬品として用いられる天然成分から、漢方薬の成分やアミノ酸、食物繊維などを代謝促進の候補物質として挙げた。そのうち、生薬として知られるオウバクを食餌によって誘導した非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)モデルマウスに投与したところ、肝臓中のコレステロール量の低下が確認された。コレステロール代謝に関与する遺伝子(ABCG5/8やCyp7a1など)の発現をreal-time PCRによって解析したところ、有意な変化はみられなかった。オウバクが肝臓のコレステロール量を低下させる物質であるとしてその成分に注目することとした。 2) オウバクに含まれる成分による肝臓脂質代謝への影響の検討:オウバクの主成分としてベルベリンやリモニンなどが挙げられる。高脂肪食誘導性NASHモデルマウスにベルベリンを摂取させたところ、非投与群に比べて肝臓コレステロール量低値、血清ALT低値、ならびに組織学的に肝脂肪化の改善がみられたことから、オウバクに含まれる成分のうちベルベリンが肝臓のコレステロール代謝の改善作用を有することが示唆された。肝臓の組織学的所見の変化やベルベリンの詳細な作用機序について、現在解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標はコレステロールおよび胆汁酸の代謝に関与する食品成分を明らかにすることであった。オウバクおよびその主要成分のベルベリンがコレステロール代謝を促進する可能性を示せたため、次年度にはその成分の詳細な生理作用機序を検討することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
生体においてコレステロールは、取り込み、合成、排出、胆汁酸への異化によってその濃度が制御されている。ベルベリンには肝臓のコレステロール低下作用がみられたため、今後はその詳細な作用を探るため、肝臓等で代謝に関連する遺伝子やタンパク質の発現を解析する。また、NASHに対する予防・治療効果を明らかにするため、適切なNASHモデル動物を用いて、投与濃度の検証を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コレステロールおよび胆汁酸代謝を改変しうる作用を有する食品(成分)をスクリーニングする際、当初予想していたよりも少ない種類の食品のうちから当該成分を見つけることができた。よって、動物や飼料等の飼育に係る費用が少なく済んだため、次年度に繰り越すこととした。次年度には、本研究成果をまとめて発表するための費用および消耗品の購入に繰り越し額を充てることとする。
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