放射線肺臓炎の機序と治療法を研究するため、C57BL/6Jマウス(10週齡雌)の両肺に局所的に放射線照射を行った後、好中球エラスターゼ阻害剤(neutrophilelastase、商品名:シベレスタットナトリウム水和剤)を投与し、肺臓炎の評価いついて検討を行った。 照射後にシベレスタットナトリウム水和剤(30 mg/kg)を投与したNEi群の照射1日後の体重、肺重量、肺組織の障害の程度を、無照射で生食を投与したControl(C)群および照射後に生食を投与したRadiation(R)群とで比較した。肺組織の障害の程度は、採材した肺の5μmパラフィン包埋切片のHE染色および好中球抗体Ly-6gを用いた免疫染色にて検討した。 照射1日後の体重(g)は3群の間で変化は認められなかった。体重当たりの肺重量(g/g)の平均値は、C群6.99x10-3、R群6.70x10-3、NEi群7.07x10-3と、R群の平均値が一番低値であったが、3群間で有意差は認められなかった。HE染色による組織の障害の程度の確認では、R群とNEi群に肺胞腔内へのマクロファージ浸潤、肺胞壁内の単核球浸潤、肺胞壁や肺胞腔内の浮腫、肺胞腔内のフィブリン沈着などの急性期放射線肺臓炎の明らかな病理所見は認められなかった。そこで、好中球抗体Ly-6gを用いた免疫染色を行い、imageJにより陽性細胞の定量を施行したが、3群間で有意差は認められなかった。
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