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2017 年度 実施状況報告書

超高速電子線回折法を用いた「水」の相転移構造ダイナミクスの直接観察

研究課題

研究課題/領域番号 17K17893
研究機関岡山大学

研究代表者

羽田 真毅  岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (70636365)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード構造ダイナミクス / 計測技術
研究実績の概要

本研究提案では、フェムト秒時間分解電子線回折計測から水の構造及び氷から水への相転移構造ダイナミクスを解明することを目標とする。氷薄膜をその場で作製する機構をすでに岡山大学で立ち上げているフェムト秒時間分解電子線回折装置に導入し、光照射によって生じる氷から水への変化をフェムト秒の時間分解能を持つ電子線回折法を用いて観測する。
この目標達成のために、2017年度は、すでに開発しているフェムト秒時間分解電子線回折装置の運用を行いつつ、ノズルから水蒸気をフェムト秒時間分解電子線回折装置中に導入し、サンプル基板に蒸着するための氷薄膜作成装置を開発した。ノズルは直線導入に設置してあり、サンプル基板に近づけられるようになっている。水蒸気を含んだ空気を導入するためにステンレス製パイプを用いてフレキシブルに伸縮するような構造をとった。さらに、水を密閉チャンバー中に入れホットプレートとリボンヒーターを用いて、水蒸気を含んだ空気を発生させ、流量調整しながらパイプに接続する。
フェムト秒時間分解電子線回折装置の運用に関しては、液体状態ではないが固体状態や液晶状態の物質のダイナミクス計測に挑戦した。この結果、液晶状態における分子のダイナミクス計測を世界で初めて成功し、報告することができた(Journal of the American Chemical Society 139, 15792 - 15800 (2017))。得られた結果は、新しい解析方法である差分法の確立という側面(Journal of Visualized Experiments, In press)を持っており、今後実施していく「氷・水」のダイナミクスの解析に役立つと考えている。
さらに、氷薄膜作成装置をすでに開発し終え、フェムト秒時間分解電子線回折装置に導入しているところである。現在、水のダイナミクス計測及び、氷から水への原子移動メカニズムの解明に取り組んでいる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

水は、最も身近である材料であるにもかかわらず、自然界の他の物質と比べ特異な物性を示し、そのため我々の生活環境において重要な役割を果たしている。しかし、実はこの水の構造は回折的な手法では解明されていないのが現状である。これは、静的な回折手法(X線・中性子線・電子線回折法)では、水の中の水素結合ネットワークが超高速で動くため、回折像がぼけてしまうことが原因であると言われている。また、上記の時間分解X線回折法では、水素原子の位置が特定できないことということも問題となる。すなわち水の構造及び構造ダイナミクスを計測するためには、超高速で動く水素の動きを捕える、すなわちピコ秒からフェムト秒の時間分解能を持つ電子線回折法が非常に有効な手法である。
岡山大学で既に立ち上がっているフェムト秒時間分解電子線回折装置を運用しつつ、さらに氷薄膜をその場で作製する機構を開発することが本研究の第一段階である。2017年度は氷薄膜をその場で作製する機構を開発に成功した。また、フェムト秒時間分解電子線回折装置の運用に関しては、液体状態のダイナミクスを計測するのと同時に進めていかなければならない研究である。現在、液晶状態の物質のダイナミクス計測に挑戦しており、液晶状態における分子のダイナミクス計測を世界で初めて成功し、報告することができた(Journal of the American Chemical Society 139, 15792 - 15800 (2017))。得られた結果は、新しい解析方法である差分法の確立という側面(Journal of Visualized Experiments, In press)を持っており、今後実施していく「氷・水」のダイナミクスの解析に役立てることができる。このような達成状況から区分(2)を選択した。

今後の研究の推進方策

今後、本研究で2017年度に作製した氷薄膜作製装置を用いて氷薄膜を真空中で製膜し、フェムト秒時間分解電子線回折法により、その光照射下における過渡的な「水」状態の氷の構造情報を得る。すなわち、本研究で作製した氷薄膜作成装置を用いて、氷薄膜を作製し、その氷薄膜に光照射し(光を氷薄膜に吸収させるために波長400 nmの近紫外光の二光子吸収過程を用いる)、融解することにより生じた過渡的な液体状態の水の構造情報を得ることを今後の課題とする。2017年度に開発した差分法を用いて、データ解析を行うことで、論文準備に着手する。そして、水および氷の構造ダイナミクスに関連した研究に邁進する。また、フェムト秒時間分解電子線回折法の高度利用(液体・固体・液晶サンプルの動的挙動計測)に関しても並行して実施する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件)

  • [雑誌論文] Novel Techniques for Observing Structural Dynamics of Photoresponsive Liquid Crystals2018

    • 著者名/発表者名
      M. Hada, S. Saito, Y. Hayashi, K. Miyata, Y. Shigeta, K. Onda
    • 雑誌名

      Journal of Visualized Experiments

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structural Monitoring of the Onset of Excited-State Aromaticity in a Liquid Crystal Phase2017

    • 著者名/発表者名
      Hada Masaki、Saito Shohei、Tanaka Sei’ichi、Sato Ryuma、Yoshimura Masahiko、Mouri Kazuhiro、Matsuo Kyohei、Yamaguchi Shigehiro、Hara Mitsuo、Hayashi Yasuhiko、R?hricht Fynn、Herges Rainer、Shigeta Yasuteru、Onda Ken、Miller R. J. Dwayne
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 139 ページ: 15792~15800

    • DOI

      10.1021/jacs.7b08021

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 時間分解電子線回折法を用いたソフトマテリアルの構造ダイナミクス2018

    • 著者名/発表者名
      羽田真毅
    • 学会等名
      埋もれた界面のX線・中性子解析ワークショップ2018(招待講演)
    • 招待講演
  • [学会発表] Structural dynamics evidencing plasmon-induced reduction in Graphene Oxide2018

    • 著者名/発表者名
      M. Hada, I. Katayama, K. Ichiyanagi, W. Chen, S. Mizote, T. Sawa, T. Suzuki, T. Nishikawa, Y. Yamashita, T. Yokoya, T. Seki, J. Matsuo, T. Tokunaga, R. Fukaya, S. Nozawa, Y. Minami, Y. Arashida, K. Tsuruta, S. Koshihara, Y. Hayashi, S. Adachi, J. Takeda, Y. Nishina,
    • 学会等名
      Gordon Research Conference "Ultrafast Phenomena in Cooperative Systems"
    • 国際学会
  • [学会発表] Molecular dynamics of photofunctionalized liquid crystals2017

    • 著者名/発表者名
      Masaki Hada
    • 学会等名
      Photoinduced Phase Transitions 6 (PIPT6)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Photoinduced Oxygen Transportation in EuBaCo2O5.382017

    • 著者名/発表者名
      Masaki Hada, Naoya Keio, Yasuhiko Hayashi, Toru Asaka, Taka-hisa Arima, Yoichi Okimoto, Shinya Koshihara
    • 学会等名
      ISAMR 2017, International Symposium for Advanced Materials Research
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 時間分解電子線回折法の液晶分子ダイナミクスへの展開2017

    • 著者名/発表者名
      羽田真毅
    • 学会等名
      物性研短期研究会「光で 見る・操る 電子物性科学の最前線~強相関, トポロジー, 低次元, ダイナミクス~」
    • 招待講演
  • [学会発表] 時間分解電子線回折法を用いたEuBaCo2O5.38の構造ダイナミクス計測2017

    • 著者名/発表者名
      羽田真毅, 慶尾直哉, 村上寛虎, 西川亘, 山下善文, 林靖彦, 横谷尚睦, 松尾二郎, 浅香透, 鈴木達也, 阿部伸行, 有馬孝尚, 沖本洋一, 腰原伸也
    • 学会等名
      日本物理学会 2017年秋季大会
  • [学会発表] Ultrafast Structural Dynamics with Femtosecond Electron Diffraction2017

    • 著者名/発表者名
      Masaki Hada
    • 学会等名
      OptoXNano
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 超高速電子線回折法を用いて探索するコバルト酸化物の光誘起酸素移動2017

    • 著者名/発表者名
      羽田 真毅、慶尾 直哉、西川 亘、山下 義文、林 靖彦、横谷 尚睦、松尾 二郎、浅香 透、鈴木 達也、阿部 伸行、有馬 孝尚、小沢 陽、沖本 洋一、腰原 伸也
    • 学会等名
      第27回日本MRS年次学会(招待講演)
    • 招待講演

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公開日: 2018-12-17  

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