研究課題
IgG4関連疾患は原因不明の全身性疾患であり、発病の原因解明が待たれている。現在国内外で様々な学説が存在しているが、いずれにおいても概ね共通して特定のT細胞が活性化することが重要ではないかと提唱されている。活性化したT細胞がサイトカインの分泌により線維化などを引き起こし、B細胞またはプラズマブラストのIgG4産生を亢進させることが発病の原因ではないかと推測されている。T細胞の活性化の原因として何らかの抗原刺激が原因ではないかと考えられている。本研究ではT細胞に抗原を提示し活性化させるのに重要な役割を果たす抗原提示細胞に着目し、IgG4関連疾患の発病機序を解明することを目的としている。抗原提示細胞にはマクロファージやB細胞など様々な種類があるが、その中でまだ十分に解析の行われていない樹状細胞に着目し研究を進めている。樹状細胞はプロフェッショナルな抗原提示細胞であり様々な種類が存在しているが、本研究ではこれまでに2種類の樹状細胞をIgG4関連疾患の病態に関わる候補として同定した。一つは皮膚におけるランゲルハンス細胞に類似した上皮内樹状細胞であり、本研究でランゲルハンス細胞様樹状細胞が唾液腺領域のIgG4関連疾患の上皮で増加することが示された。この結果はIgG4関連疾患において粘膜上皮が抗原提示の場となりうるということを示唆するものであり、上皮内の樹状細胞が抗原の補足やT細胞への抗原提示に関与している可能性を提示するものである。もう一つは指状陥入細胞に類似した樹状細胞である。指状陥入型樹状細胞はリンパ節においてT細胞に抗原提示を行う重要な細胞であり、本研究でIgG4関連疾患の病変部に増加していることが分かった。以上2種類の樹状細胞の病理学的意義について近日論文を投稿予定である。
3: やや遅れている
研究代表者の所属施設が変更となり、症例の再収集、使用予定であった設備の変更などで予定よりも時間を要している。当初の研究計画では適切なIRB取得の上で患者血清を使用することを計画していたが、希少疾患で症例数が少ないこともあり新施設での実行は難しいものと予測される。
当初はIgG4関連疾患において樹状細胞が認識する特定抗原を患者血清を用いてスクリーニングする予定であったが、進捗状況で述べた通り当初の予定通りには遂行が難しいと考えられる。そのため、研究推進の手法を変更予定である。IgG4関連疾患における樹状細胞の役割を検討するにあたり、樹状細胞とその周囲の免疫環境についてnCounterによる網羅的な遺伝子発現プロファイルを検索することを予定している。これまでIgG4関連疾患において活性化したT細胞が分泌するサイトカインの発現は様々な学術論文で検討・報告されているが、多くは数種類のサイトカインを選択してreal-time PCRで比較するという手法であった。本研究ではnCounter法を用いて網羅的にサイトカインの発現を検討する他、樹状細胞やT細胞、他の免疫細胞の遺伝子発現を広く同時に検討することで抗原提示を含めた複雑な免疫応答を整理することができるのではないかと期待される。現時点でIgG4関連疾患がアレルゲンによるアレルギー応答なのか自己抗原に対する免疫応答なのか結論は出ておらず、病変部の免疫環境を網羅的に観察することで抗原特定の糸口になることが期待される。
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Haematologica
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10.3324/haematol.2018.205567
Scientific Report
巻: 9 ページ: -
10.1038/s41598-018-37404-x
巻: 8 ページ: -