研究実績の概要 |
起立性調節障害患者の検体採取と新起立試験によるサブタイプ・重症度判定のデータ収集 臨床検体を用いた検討については、岡山大学病院小児科を受診している患児を対象として行った。岡山大学倫理委員会の承認を取得し、患児および対照児の親権者に、研究の目的を詳細に説明し検体の採取・患者情報の取り扱いについても文書での同意を得た上で、匿名化などの倫理規定を順守し実施している。患児および対照児自身にはインフォームドアセントを得ていた。 新起立試験は連続血圧測定装置を用いたサブタイプ分類判定を行っている。また近赤外線酸素モニター装置(NIRS)を用いて脳血流の評価も同時に実施している。これまでに約32例の症例から研究同意を得てデータを収集した。血清d-ROMs値,血清BAP値を測定し,血清d-ROMs正常群と高値群(>300 U.CARR)と血清BAP正常群と低値群(≦2200μmol/l)に分けて,性別,年齢,サブタイプ分類,不登校状態(測定時と悪化時)の検討を行った。 .性別、年齢、サブタイプ分類いずれも,血清d-ROMs正常群と高値群、血清BAP正常群と低値群で有意差を認めなかった。また測定時の症状とd-ROMsテストの関連はなかったが,悪化時の不登校状態との関連があり,素因としての重症化しやすさを反映している可能性が考えられた。血清BAP値も同様に測定時の症状との関連はなかったが,悪化時の不登校状態との関連があった。酸化ストレス値は,心血管系疾患や肝炎の予後予測マーカーとなるといわれており,これと同様に酸化ストレスに関係する疾患の予後予測できる可能性がある。新起立試験は検査時の体調に影響を受ける,体調が不良な場合は実施が難しいなどの問題がある.一方,酸化ストレス環境を測定することは,素因としての重症化しやすさを客観的に予測できる可能性があると考えられた。
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