研究課題/領域番号 |
17K17898
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鈴木 越治 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10627764)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 健康格差 / 社会疫学 / 因果推論 / 疫学理論 / マルチレベル分析 / ライフコース / シミュレーション / メカニズム |
研究実績の概要 |
初年度の研究実績を発展させて,交絡バイアスを調整するための変数選択法に関する新たな知見を発表した。本研究では,反事実モデルと十分原因モデルという重要な2種類の因果モデルの対応をもとに,調整すべき変数選択を決定する理論を数理的に構築している。反事実モデルは特定の原因について様々な結果を論じるモデルである一方で,十分原因モデルは特定の結果について様々な原因を論じるモデルである。十分原因モデルにおいて正の単調性仮定が成立する状況で,交絡バイアスを調整するための変数をどのように選ぶべきかを検討した。その結果,標的集団が曝露群の場合には,共変量バランスは交絡バイアスを制御するための必要十分条件となることを示した。一方で,標的集団が非曝露群や全集団の場合には,共変量バランスが交絡バイアスを制御するための十分条件であるものの,必要条件ではないことを示した。健康格差研究では標的集団が曝露群となることが多い。健康格差メカニズムの解明のため,本知見を活用して変数を選択した研究を実践することが重要となる。 また,無作為化比較試験におけるメカニズムや不確実性に関する論文を著した。特に,研究における無作為化の目的や限界,メカニズム解明における無作為化の意義について,因果モデルの観点から詳説した。 これらの研究成果は,健康格差メカニズムの解明に向けた研究理論構築の基盤となるものである。研究成果を,大西洋因果推論学会(平成30年5月,ピッツバーグ),米国疫学学会(平成30年6月,ボルチモア)で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の研究協力者と定期的に会合をもち,本研究の遂行およびデータ解析を適切に実施する上で必要となる疫学・統計学理論の構築を継続的に行っている。2018 Atlantic Causal Inference Conference(平成30年5月,ピッツバーグ),51st Annual Meeting of the Society for Epidemiologic Research(平成30年6月,ボルチモア),第29回日本疫学会学術総会(平成31年1月~2月,東京)で最新の関連研究等の情報収集および意見交換を行ったほか,研究成果の発表を行った。 また,マギル大学(モントリオール)や愛知県がんセンターで疫学理論に関するセミナーを実施し,研究の発展に取り組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に沿って,研究協力者との連携のもと研究を遂行する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費,旅費について,当初の計画より若干少ない金額で研究を遂行できた。次年度の物品費,旅費に追加し,適正に使用する。
|
備考 |
マギル大学(モントリオール)および愛知県がんセンターで,疫学理論に関するセミナーを実施した。
|