研究課題/領域番号 |
17K17906
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
津野地 直 広島大学, 工学研究科, 助教 (40758166)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 層状ケイ酸塩 / ゼオライト / 触媒 / 光触媒 / バイオマス / 層状化合物 / シクロヘキサン / 部分酸化 |
研究実績の概要 |
結晶性アニオンシートと層間カチオンから構成される層状ケイ酸塩は、その構造的特徴から、触媒、吸着、光学センサー等、多様な機能構築が可能な設計母体である。現在までに様々な構造設計手法が提案され、層状ケイ酸塩の機能発現の土台となる要素は十二分に開拓されてきた。しかしながら、本材料の研究は基礎的な研究領域を逸脱できておらず、本研究領域が今後継続的に発展していくためには、材料の本質を理解した上で、既存材料と差別化された比類ない機能の構築が必要である。 本研究では、層状ケイ酸塩の結晶性表面構造とシリケートシートの積層構造に着目した構造設計指針に基づいて、高活性・高選択的な触媒反応場を新規層状ケイ酸塩群(Hioroshima University Silicate)の表面で設計した。 層状ケイ酸塩表面に結晶学的な規則によって配置されている水酸基部へ様々な金属種を固定化することで、配位環境の整った分子性金属酸化物種に由来する反応活性点の設計を行った。さらに、固定された金属種へ配位子交換を試み、金属種に近接した位置にハロゲン元素を導入した。本活性種は、炭化水素内のC-H結合を高効率で開裂させ、選択的に部分酸化生成物を供給することが可能であった。 層状シートのナノシート化にも取り組み、ナノメートルオーダーの厚みを持つ本材料が、高い外表面積を持っていることを確認し、さらに、本触媒に対して、最適化されたプロトン交換処理を行うことで、外表面に存在する活性点の崩壊が抑えられ、その触媒活性をさらに向上させることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
層状ケイ酸塩HUS-7の架橋水酸基にTi錯体を反応させることで、通常では達成し得ない高い表面密度で四配位状態のTi種を固定し、高いTi含有量を持つ本触媒が、光触媒的部分酸化反応または酸化物を用いたオレフィンの部分酸化反応対して高い活性を示すことを明らかにしている。さらに、本触媒上に固定されたTi種の局所的な環境を後処理的な配位子交換により達成した。得られた配位子交換後の触媒の性能を光照射による炭化水素の部分酸化反応によって評価したところ、高効率で部分酸化生成物を生成した。触媒の光応答性や生成したラジカル種の観測結果から、本触媒の優れた活性は、高い金属種の表面密度と光励起可能な金属種近傍に存在しるハロゲン元素が効率よくラジカル種に変換され、本化学種が酸化反応の媒体になっていることが強く示唆された。 上記の配位子導入処理を、孤立活性種を持つ既存物質(ゼオライト等)に対しても行ったところ、部分酸化生成の効率は良くなったが、層状ケイ酸塩触媒に存在する塩素種の方が効率的に酸化反応を触媒し、ラジカルの媒介物質である塩素と、光吸収中心である四配位金属種の空間分布が本触媒系における高活性達成のカギであることが示された。 層状シートのナノシート化に関しては触媒調製時のプロトン化処理を注意深く検討し、最適な条件における処理において、ナノシートの外表面上の酸点の局所構造崩壊を最小にする条件を見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
結晶性表面での金属酸化物触媒活性種の精密設計: 昨年度で得られた異種元素導入の効果を基に、固定化する異種金属を様々に変更し検討を行う。また、本ラジカル媒体種を経由した反応のメカニズムを明らかにするため、様々な光照射条件や、異種基質、加熱の有無を検討し、更なる高効率反応系の開拓につなげる。 シリケートシートのナノシート化: 昨年度にも加え、シリケートシート積層構造制御手法を異なる構造を持った層状ケイ酸塩にも適用させ、本手法を普遍性を評価し、様々なシート構造を持ったナノシート材料群の合成を試みる。さらに、剥離を行った材料に様々な表面修飾を行うことで、更なる高性能触媒の設計に発展させていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
導入予定であった消耗品、装置関連費が他の予算または既に所持しているものでまかなえたため、次年度使用額として計上した。本年度、新たに生じる消耗品、機器などに使用する。
|