研究課題
結晶性アニオンシートと層間カチオンから構成される層状ケイ酸塩は、その構造的特徴から、触媒、吸着、光学センサー等、多様な機能構築が可能な設計母体である。現在までに様々な構造設計手法が提案され、層状ケイ酸塩の機能発現の土台となる要素は十二分に開拓されてきた。しかしながら、本材料の研究は基礎的な研究領域を逸脱できておらず、本研究領域が今後継続的に発展していくためには、材料の本質を理解した上で、既存材料と差別化された比類ない機能の構築が必要である。本研究では、層状ケイ酸塩の結晶性表面構造とシリケートシートの積層構造に着目した構造設計指針に基づいて、高活性・高選択的な触媒反応場を新規層状ケイ酸塩群(Hioroshima University Silicate)の表面で設計した。最終年度ではこれまでの結果を総括し、層状ケイ酸塩へのチタン錯体の固定化とその配位環境の制御、さらにはその活性点を利用したシクロヘキサンの光触媒的部分酸化反応を行った。得られた触媒は、疑似太陽光照射下かつ空気を酸化剤とした条件でさえ炭化水素の部分酸化反応が可能であり、過剰酸化反応も抑制されていた。これは、層状ケイ酸塩表面に固定化された金属種の近傍に存在するハロゲン原子の位置を意図的に操作することで、炭化水素の水素引き抜きから始まるラジカル連鎖的な反応を促進できたためである。また、層状のナノシート材料に対して、嵩高い分子を用いた触媒特性の評価を行い、本材料の活性が、既存のゼオライトナノシートと比較して著しく高いことを明らかにした。これは、本材料の広大な外表面上に高い密度で酸点が存在していることに起因していた。以上の結果と研究期間全体を通じた考察から、層状ケイ酸塩材料の精密な構造設計によって、既存材料を凌駕する高選択的または高活性な触媒反応場を構築することが可能であることを明らかにした。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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