研究課題
悪性腫瘍合併脳梗塞は血液凝固亢進状態が基盤となっており、抗血栓療法を行っても再発を繰り返し患者の日常生活レベルを著しく低下させる。特に、ムチン産生腫瘍で血液凝固異常が起こりやすいとされており、癌の治療のみならず血液凝固亢進に伴う脳梗塞の早期検出、予防の確立が望まれている。本研究では、悪性腫瘍合併脳梗塞患者に関連するマイクロRNAを血液中から網羅的に同定し、血液凝固亢進や再発との関連を検証する。新規マイクロRNAが同定できれば、コントロールに難渋してきた悪性腫瘍合併脳梗塞の治療、さらには癌患者の脳梗塞発症予防にも応用できる。悪性腫瘍合併脳梗塞患者を対象に血液凝固異常や予後を反映する血液バイオマーカー、マイクロRNAを探索することを目的に以下の2点の研究を開始した。1) 悪性腫瘍合併脳梗塞患者を対象とした疫学調査を研究協力施設とともに倫理委員会の承認を得て開始している。悪性腫瘍合併脳梗塞患者の頭部MRI画像所見、血液検査所見、抗血栓療法、予後などの実態調査を行い、現状の問題点や予後に関連する因子を抽出する予定である。2)広島大学病院の症例に関しては、悪性腫瘍合併脳梗塞患者の中で、特にトルーソー症候群と考えられる症例を中心に血清保存を行っている。急性期脳梗塞における一般的な病型(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症)の症例の血清も保存しこれらと比較することで、悪性腫瘍を基盤とした血液凝固異常における特異的なマイクロRNAを探索する予定である。今年度は上記に加え、本研究に付随する研究「Alpha-2-macroglobulin as a Promising Biological Marker of Endothelial Function」「Impact of D-dimer levels for short-term or long-term outcomes in cryptogenic stroke patients.」を原著論文で報告した。
2: おおむね順調に進展している
悪性腫瘍合併脳梗塞に関する疫学調査に関しては、広島大学を含む連携病院、合計4施設で倫理委員会の承認を得て症例登録が開始になっている。また、広島大学病院においては患者の同意を得て血清保存を開始している。先行研究においても学会発表、論文発表を行っている。
疫学研究に関しては、目標症例数を過去の連携病院の実績から400症例としている。200症例の段階で中間解析を予定している。悪性腫瘍を基盤とした血液凝固異常における特異的なマイクロRNAの探索に関しては、各病型の血清が約10症例ずつ集まった段階でマイクロアレイによる網羅的解析を行う予定である。
本年度はマイクロRNAの解析は行っていないため、物品費用を節約することが可能であった。来年度はマイクロアレイ解析を行う予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
J Atheroscler Thromb
巻: 25 ページ: 350-358
10.5551/jat.41335
J Neurol
巻: 265 ページ: 628-636
10.1007/s00415-018-8742.