研究課題/領域番号 |
17K17909
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
有賀 敦紀 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (20609565)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心理空間 / 社会的認知 / 文化差 |
研究実績の概要 |
混雑したカフェで,私たちは注文前に座席にバッグを置いて,その場所を確保することがある。これは身体から離れた所持品を自分に見立てて,自分のテリトリーを他者にアピールする,という生物的・社会的行動である。このように,所持品は拡張された自己として機能するが,その周囲に形成される心理空間の特性を調べた研究はこれまでにない。そこで本研究は「モノに宿った自己が形成する心理空間」の解明を目指している。 平成29年度は申請者自身の先行研究をさらに発展させる形で,人やモノの心理空間を「予測」と「行動」の両側面から調べた。その結果,実験参加者が心理空間を予測するとき,周辺的な外的要因(他者の匂いや性別など)の影響を大きく見積もる傾向があることがわかった。しかし,実際の行動レベルで心理空間を測定すると,それらの要因は心理空間に対してそれほど大きな影響を与えないこともわかった。以上のことから初年度は,人とモノの心理空間について,予測と行動がずれることを明らかにした。 また,並行して行われた認知実験では,実験参加者は他者の顔や視線(社会的な刺激)に対して自動的に注意を向けること,その機能には文化差があることが明らかにされた。これらの認知特性が,人やモノの心理空間に影響を与える可能性がある。 以上の知見は,次年度以降の研究のベースになるものである。これらの成果をまとめたものは,Psychological Research誌とFrontiers in Psychology誌に掲載が決定している。また,関西学院大学社会心理学研究センターなどで講演も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
独立基盤形成支援によって実験室を拡張するなど,効率的な研究体制が整ったため。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画通りに研究を進めるが,社会的刺激の認知処理において明確な文化差があることがわかったため,その点にやや重点をおく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用する物品(輝度計)を予定より安く購入することができたため,その分については実験用PCの追加購入にあてる。
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