研究課題/領域番号 |
17K17909
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
有賀 敦紀 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (20609565)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 対象認知 |
研究実績の概要 |
混雑したカフェで,私たちは注文前に座席にバッグを置いて,その場所を確保することがある。これは身体から離れた所持品を自分に見立てて,自分のテリト リーを他者にアピールする,という生物的・社会的行動である。このように,所持品は拡張された自己として機能するが,その周囲に形成される心理空間の特性 を調べた研究はこれまでにない。そこで本研究は「モノに宿った自己が形成する心理空間」の解明を目指している。 令和2年度は前年度の研究をさらに発展させる形で,モノと心理空間の関係について,厳密な認知実験によって検討を重ねた。前年度は,他者のスマートフォンが視覚探索画面付近に存在すると,探索 (すなわち注意の定位)が妨害されることを明らかにしたが,今年度はこの妨害効果の時間特性を明らかにした。具体的には,探索開始直後よりも,ある程度時間経過した後に妨害効果が大きくなる傾向があることを突き止めた。さらに,インターネット依存度が高いほど妨害効果が大きくなる傾向を示し,妨害効果に参加者の個人特性が関わっていることも明らかにした。 さらに,並行して行われた認知実験では,顕著なイベントは参加者の探索方略に影響を与えること,顕著なイベントによって物体が新規な物体として再処理されること,視覚と聴覚の連合学習の結果がモノに対する行為に影響を与えること,曖昧な運動表象形成に言語処理が影響を与えることなど,人間の対象認知のメカニズムを多角的に明らかにした。 以上の成果をまとめたものは,i-Pereption誌, Psychonomic Bulletin & Review誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で海外における成果発表が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
海外における成果発表が難しいため,国内で行われる学会や研究会等で成果発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により,海外における成果発表を行うことができなかったため。次年度は国内の学会・研究会等での発表を計画しており,それに伴う参加費・旅費として使用予定である。
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