本研究課題の目的は、間接的要求の理解について、話し手からのフィードバックによる理解過程の調整を検討する必要があるという想定のもと、間接的要求の理解と社会的報酬・社会的罰による学習との関連を検討した。 令和元年度は、平成30年度に実施した研究成果を踏まえ、2つの目的を設定した。1つは、間接的要求の理解に対する話し手のフィードバック予測が個人の間接的要求の理解に影響している可能性を検討することである。もう一つは、間接的要求の理解過程について、話し手との相互作用を組み込んだモデルを提案することである。 一つ目の目的について、その成果を報告する。平成30年度に開発した尺度を用い、各回答者の間接的要求の解釈バイアスを推定した。また、各回答者には、解釈バイアスを推定する場面とは異なる会話場面を呈示し、その場面で「間接的要求を理解すること」および「間接的要求を理解しないこと」による話し手の感情や話し手の聞き手に対する印象評価の予測を行わせた。「間接的要求を理解することによるポジティブな評価予測をする回答者」および「間接的要求を理解しないことによるネガティブな評価予測をする回答者」は、要求の解釈バイアスが強いことが予測された。しかし、個人レベルの検討ではそのような関連は確認されなかった。一方で、場面ごとに検討すると、間接的要求を要求として理解することが正しいと判断される率が高い場面ほど、「間接的要求を理解することによるポジティブな評価予測」および「間接的要求を理解しないことによるネガティブな評価予測」が成立していた。 二つ目の目的については、間接的要求の理解の特徴を論じ、話し手からのフィードバックによる理解過程の調整を検討する必要があることを指摘する論文を発表した。
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