本研究は、中学校技術科「材料と加工の技術」の技能面の指導の方法や教材について、思考・意識に関連する前頭前野の脳活動による評価手法を確立することに加え、技能の効果的・効率的な指導法の提案し、その有効性を授業実践により評価することを目指すものである。 最終年度の2019年度は、これまでの成果を踏まえ、研究項目(4)技能の効果的・効率的な指導法の開発と評価を行った。製図学習に着目し、現行・次期学習指導要領と現行教科書等を踏まえた第三角法による正投影図(以下、第三角法)の学習方法として、モニタに投影した等角図と3Dの画像、実物模型(3Dプリンタ)の3種類を第三角法に書き換える課題を実施した。図形は、昨年度より難易度を高め、60×60×40 mmの直方体(20 mm立方体18個)から20mm立方体を3個取り除いた立体を難易度別に作成した。課題作業前・中・後の酸素化ヘモグロビン濃度変化(ΔoxyHb、額16ヶ所)、自律神経活動等を調べた結果、第三角法未学者群(中学校以降)や製図苦手群は、3D画像を用いた場合、ΔoxyHbの複数の測定位置において作業前と比較して作業中に有意な上昇を示した。図面の回答数や正答率、作業直後の満足感・疲労感等は種類間で有意差は認められなかったことから、図面の評価や主観評価では読み取ることのできない思考・意識の変化を前頭前野の脳活動により詳細に評価することが可能であることが示唆された。 本研究課題を通して、「材料と加工の技術」の技能面の理解・習熟度を前頭前野の脳活動により客観的かつ詳細に評価することの可能性を見出すことができた。しかし、他の技能や教材、指導法の評価への適用の可否については、十分なエビデンスが得られていない。加えて、提案した学習方法の授業実践を行うことができず、脳活動との対応を検討することができなかったことから、引き続き研究を進める計画である。
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