研究課題/領域番号 |
17K17924
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
宮脇 慎吾 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (70756759)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 性決定 / エピゲノム / 代謝 |
研究実績の概要 |
ヒストン脱メチル化酵素の一つJmjd1aはヒストンのメチル化修飾を外し、Sryを活性化する。Jmjd1aを欠損したマウスは、雌雄への分化が拮抗した状態になり、Y染色体を持つにもかかわらず、卵巣を2つもつ性転換、性転換が不完全な半陰陽、性転換しない雄が混在する。ところが、食餌条件によりJmjd1a欠損マウスの栄養代謝環境を変化させて性転換効率を調べたところ、特定の飼料を与えたマウスは100%の割合で性転換を生じることを申請者は見出した。本年度は、妊娠母体の栄養代謝環境が胎仔の性決定に与える影響を明らかにするために、Jmjd1aヘテロ欠損マウスのメスを過排卵惹起して採卵し、Jmjd1aヘテロ欠損マウスのオスの精子と人工授精した受精卵を偽妊娠マウスの卵管に移植する人工授精の実験系を確立した。この実験系により、妊娠母体に均一の条件で代謝変化を与えることが可能となる。受精卵を偽妊娠マウスへ移植した後に、高脂肪食(HFD)、カロリー制限食(CR)、酢酸(Acetate、アセチル化の基質)および、DCA(解糖系の阻害剤)を与えて生まれてきた個体の性別と遺伝子型を評価した。結果として、全ての実験群で性転換をする個体が優位に生まれることが判明した。今後、性転換が優位に生じる原因を究明していく。哺乳類の性決定と代謝の関係を明らかにするためCRISPR-Cas9によるゲノム編集技術を駆使し、未分化生殖腺体細胞で高発現する17個の代謝関連遺伝子のノックアウトマウスを作成した。本年度は、17遺伝子中15個のノックアウトマウスの作成を完了した。今後、作成したマウスが性転換を示すかどうかを評価し、さらには代謝変化により性転換を示すメカニズムをエピゲノムの観点から解析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子を機能不全にするノックアウトマウスを作成する手段として、タンパクをコードする領域に、Flagタグと終始コドンを挿入し、遺伝子の途中でタンパクの翻訳を止め、Flagタグにより改変されたタンパクを検出する方法を確立した。本手法は高効率にノックアウトマウスを作出することが可能なため、本年度中に、目的とする遺伝子のノックアウトマウスの大部分(15/17遺伝子)を作成することに成功している。表現型の解析は遅れているが、本年度作出したマウスを人工授精により交配していくことで、迅速に目的の遺伝子型のマウスを作出し、表現型の解析を実施していく。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ノックアウトマウスの作製を行う。作製が完了したマウスに関しては、順次、性転換の有無を生殖器の構造と、胎仔期の生殖腺体細胞のSox9とFoxl2の免疫染色により評価する。表現型の解析は遅れているが、本年度作出したマウスを人工授精により交配していくことで、迅速に目的の遺伝子型のマウスを作出し、表現型の解析を実施していく。 胎仔生殖腺の発生を母体外で再現するための実験方法として、全胚培養法の実験系の確立を行う。この実験系を確立した際には、作出したノックアウトマウスで性決定に表現型が見出されたものをサンプルとして用い、代謝変化がもたらす性決定への影響を精査する。具体的には、エピゲノム修飾に必要な基質の投与や、培養液の組成を脂肪酸過多やグルコース過多にすることにより、性転換したマウスの表現型のレスキューを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に計上した、大型機器の選定が進まなかったために、次年度へ繰越すことになった。次年度に研究機器の選定と導入を進める。また、飼育する動物の頭数が当初より増加することが想定されるため、次年度にマウス飼育費用を計上する予定である。
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