研究課題
収集した多くの検体で、メタゲノムシーケンス解析によりヘテロサイトが確認された。その解析の1例として、Helicobacter cinaediによる再燃症例で確認された患者内多様性を挙げる。本菌は、高い再燃率が問題になっているが、感染源や感染経路は明らかにされていない。本症例は、発症期に51日間の時間的間隔があった。それぞれの血液検体を全ゲノムシーケンス解析した結果、複数の塩基型が確認される多型部位(ヘテロサイト)がゲノム上に6ヶ所確認された。そこで、同一染色体上に存在する遺伝型(ハプロタイプ)を明らかにするために、平板培地に塗抹して得られたコロニー(個別菌)の全ゲノムシーケンス解析をおこなった。個別菌の解析の結果、初発期に5つの宿主内多様性(遺伝型)、再燃期には2つの遺伝型が確認された。再燃期の遺伝型は、初発期に確認された遺伝型であった。初発期に存在した多様性は、複数クローンが体内に侵入した可能性だけでなく、発症するまでに生体内で本菌がコロナイゼーションしていた可能性が考えられた。また、初発期から再燃期までの優勢クローンの経時的な移り変わりは、患者生体内で有利なクローンが選択された可能性が考えられた。そこで、各ヘテロサイトについて詳細な解析を行ったが、本症例では宿主内の環境から受けた選択圧(たとえば、治療のために投与された抗菌薬)からエスケープした形跡の特定には至らなかった。本検体に比べて、高頻度でヘテロサイトが確認された検体が多くあり、複雑な解析作業になっている。多様なクローンが検出される頻度と、原因菌種の常在性/環境由来や侵入門戸、感染経路などとの相関解析を行い、各菌種における多様化の様式・パターンを明らかにすることを目指して、現在詳細な解析を進めている。
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Open Forum Infectious Diseases
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