研究課題/領域番号 |
17K17934
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白木 智丈 九州大学, 工学研究院, 助教 (10508089)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 近赤外発光 / 化学修飾 / 分子構造 / 異性体 / 電子構造 |
研究実績の概要 |
本研究では、高効率な近赤外発光を示すことが最近明らかになってきた局所化学修飾カーボンナノチューブ(lf-SWNT)において、化学修飾サイトの構造デザインという独自アプローチをもとに近赤外発光の波長設計や動的な波長変換機能を創出するための方法論を確立する。これにより、新規の近赤外発光性ナノ材料の開発が行えることから、レアメタル不要な近赤外光源や高性能イメージング技術の開発など種々の応用分野への貢献が期待される。H29年度は、局所化学修飾により導入する分子の構造を種々検討し、発現する発光特性との関連を調べた。その結果、アリールジアゾニウム塩との反応によりカーボンナノチューブを修飾した場合、置換アリール基の位置異性体構造の違い(パラ位、メタ位、オルト位)に応じてlf-SWNTの発光特性が既報のものとは大きく異なることがわかった。特に、オルト位に置換基をもつアリール基を修飾した場合には、通常のlf-SWNTで観測される発光よりもさらに長波長化した全く新規な発光が出現するという興味深い現象が観測された。またlf-SWNTの基礎物性解明を目的とした研究においては、当研究室で開発したin situ photoluminescence spectroelectrochemical methodという手法によってlf-SWNTの電子構造評価を行った。得られた結果を熱力学的な解析法をもとに評価した結果、修飾分子の構造に応じて電子構造が異なる(修飾に基づくHOMOとLUMOの準位変化が異なる)ことを実験的に明らかにした。以上のように、lf-SWNTの発光特性変化を導く新たな分子的要因の開拓や未開拓であった基礎物性の解明などの新規かつ重要な成果を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記載したように、修飾分子の設計に基づくlf-SWNTの発光特性の変調や基礎物性を明らかにすることに成功している。近赤外発光の動的変調についても、新たな分子設計からの変調技術開拓に関する基礎的知見は既に得たことから、今後さらなる検証を進めることで本技術の確立を達成する。以上のように研究はおおむね順調に進んでおり、予測を超える新現象も観測されていることから、本研究は今後より一層の発展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、計画に従って現在進めている研究方針を継続するとともに、得られた知見からの新たな発展を目指す。例えば、本年度に得られた上述の知見はこれまで未開拓であった新規な材料開発につながる可能性を有していることから、これらを基盤技術として独自のlf-SWNTの機能化を実施する。また、動的変調技術についても修飾分子の構造設計をもとに、開発してきた分子認識に加えてさらに多様な変調システムの開拓を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度得られた成果から、より多様な分子設計を取り入れることによって研究の発展的な展開が行えることが明らかになった。そのため、次年度において合成などに費やす資金の拡充が必要になったことから、使用計画を変更した。具体的には、新たに必要となる物品(試薬など)の購入やそれにより得られた成果発表のための旅費等を支出する計画である。
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