本研究では、インスリンとその下流分子に着目し、その末梢味覚器における働きを探索した。インスリンレセプターはマウス味蕾に広く発現しており、また、マウス味蕾幹細胞を高濃度のインスリンを含む培地で培養すると、コロニーに含まれる味細胞の数、味細胞マーカーmRNA発現が有意に減少することがわかった。さらに、インスリンシグナリングの下流に存在し、細胞分裂や生存の調節に重要な働きを持つことが知られるmTOR経路を薬理学的に阻害すると上述のインスリンの効果は打ち消された。以上の結果は、インスリン-mTOR経路が味細胞の分化/増殖調節に大きく関わる可能性を示唆する。
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