平成30年度は、前年度に引き続き関係資料の現地調査とともに、史料集の刊行など、研究成果の取りまとめを行った。 (1)現地調査 (a)前年度に引き続き松浦史料博物館において平戸藩「御家老日記」の調査・撮影を行った。本年度は「御家老日記」のほかに、近世前期の関係史料などについても合わせて調査を行った。(b)長崎歴史文化博物館において長崎県庁文書の調査・撮影を行った。本史料は明治期の西海捕鯨の基礎史料となるものである。(c)高知県立歴史民俗資料館において多田家文書の調査・撮影を行った。多田家は、土佐藩の鯨組の経営主(頭本)の一つで、近世から明治期までの捕鯨史料がまとまって残されている。今回の現地調査によって、多田家文書に含まれる捕鯨史料についてほぼ全点撮影が完了した。(d)九州大学記録資料館において調査を引き続き行った。今年度は旧古座町役場文書などの調査を行っている。(e)オランダ国立公文書館、ライデン大学図書館などにおいて海外の捕鯨史料の調査と、欧米の捕鯨史研究に文献調査を行った。 (2)研究成果の取りまとめ 本年度は、投稿をしていた論文1本(「西海捕鯨業における漁場秩序と地域社会」)の刊行のめどが付いたほか、五島列島小値賀島の中小鯨組の史料集1冊(『日本捕鯨史料叢書 第一輯 肥前小値賀大坂屋組文書』)を発刊することができた。本史料は幕末の鯨組の経営史料をほぼ全点翻刻したもので、当該分野の研究の基礎を提供するものである。なお、当初予定をしていた捕鯨史料の所在目録を中心とする報告書については、想定よりも多くの関係史料の所在が確認されたことなどから、今回は発表を見送った。今後、より万全を期して発表に漕ぎ着けたい。また口頭発表を行った研究成果(鯨捕獲量の時系列推移、捕鯨業の賃金システムなど)については、本年度内に成稿化には至らなかったが、現在、学術誌への投稿に向けた作業を継続している。
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