酸化スズ等を利用した酸化物系半導体ガスセンサは、粒子表面の吸着酸素と可燃性ガスの反応に伴う電気抵抗値変化を基にガスを検知する。酸化スズの表面エネルギーは(110)面が最も安定とされている。このため、同様に大きな露出面である(101)面と(110)面では表面エネルギーや酸素等のガスの吸着エネルギーが異なるとされている。このため、露出結晶面制御により半導体ガスセンサのセンサ感度を向上可能であることが期待できる。 本研究では水熱合成法を利用して(110)配向を有するSnO2ナノロッドを調製。さらに、ナノロッド長を制御し(110)面と(101)面の露出比を制御したSnO2ナノロッドを調製した。 得られたSnO2ナノロッドを用いて(110)及び(101)面による水素及びエタノール応答特性について評価した結果、水素に対しては200-300℃の範囲で、(101)面の露出の多いロッド長の短いSnO2が高いセンサ感度を示した。一方、エタノールに対するセンサ感度は(110)面の露出の多い、ロッド長の長いSnO2ナノロッドが高いセンサ感度を有する結果となった。さらにこの傾向は低作動温度において顕著となり、100℃で1桁程度のセンサ感度の差を示した。このような低温作動時には、極性の高いエタノール分子はSnO2粒子表面に吸着ことが示唆される。さらにエタノール吸着は、粒子表面への酸素の再吸着を阻害するために、センサ感度向上をもたらすと考えられる。以上のことから、燃焼反応によるセンサ応答においては(101)面が優位に働く一方、ガスの吸着によるセンサ応答においては(110)面において優位に働くことが示唆された。この結果は、第一原理計算を用いて算出した、ガスの吸着エネルギーと結晶面の関係とも一致するものであった。
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