研究実績の概要 |
本課題では、ドナーとしてエナミンを、アクセプターとしてハロゲンやシアノ基、ニトロ基といった種々の電子求引性置換基を有するD-A型π共役エナミンを合成し、それらの紫外可視および蛍光スペクトルを測定することで、光機能に関する系統的な評価を行うことを目的としている。この有機合成においてカギとなるのが、申請者が開発したイリジウム錯体を触媒としたアミド化合物のヒドロシラン還元であり、昨年度までに、シアノ基やニトロ基、更にはケトンやアルデヒド、エステルといったカルボニル基共存下でも化学選択的にアミドのみをエナミン化することに成功している。 最終年度は、アクセプターをニトロ基に固定し、リンカー骨格やドナー骨格が物性に与える影響について精査した、その結果、吸収・発光波長とも長波長シフトさせることに成功した。また、合成したD-Aπ共役エナミンへのLewis酸添加効果についても検討した。アクセプターにはホルミル基、アセチル基、シアノ基、ニトロ基を選定した。計算結果から予測される通り、HOMO-LUMO gap の減少に応じて吸収・発光波長とも長波長シフトしたが、予想に反して、ホルミル基、アセチル基、シアノ基について大幅な発光量子収率の向上が見られた。顕著な例として、ホルミル基を持つエナミンはヘキサン中で70%, アセチル基を持つものはトルエン中で97%という非常に高い値を示した。これは、エナミン化合物が新たな含窒素ドナーとしてのポテンシャルを秘めている、意義深い成果となった。本成果はJournal of the organic chemistry 誌にて発表し、supplementary cover finalist となった。また、本分野を開拓した点は高く評価されており、Tetraherdon Letters 誌に当該分野のminireviewを掲載することとなった。
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