最終年度においては、Switch AsiaプログラムとEU(欧州連合)の環境分野の標準化・認証政策の間に直接的な関連性を見出しがたい、という前年度に明らかになった知見を踏まえて、関連する政策過程の文献調査を主とする再検討を行った。ここでは、同様に認証を政策に組み込み、域外との協力関係を構築しつつある森林などの他の分野との比較に焦点をおき、検討する作業を行った。その作業を通じて、域内環境認証をグローバル・レベルで普及させるという点においてEUの戦略性、一貫性は必ずしも明確に析出しえないことを再確認した。そして、このような戦略性というよりも、むしろ、域外との協力関係を構築する際に、EU域内の規制との段階的な調整を重視、下位ガヴァナンスの自律性を尊重する「実験的ガヴァナンス」(Experimental Governance)という態様・方法における共通性の現れとして理解することが妥当であるという暫定的な結論を得るに至った。 2019年度においては、このような結論を踏まえて、2019年6月の日本平和学会春季大会(福島大学)において「持続可能な生産の消費(SCP)アプローチの位相」というテーマで報告を行った。ここでは、討論者の指摘および参加者の質疑応答を通じて、有益な示唆を得ることができた。これらの指摘を受けて、結論の妥当性を確認するとともに、環境認証に対する域内のアクターの選好が明確化していない中で、EUが戦略を展開する十分な環境が醸成されてないのでないかという考察を加え、最終的に『社会環境学』に「持続可能な消費と生産(SCP)に関するEU域外戦略―「実験的」ガヴァナンスの視点」からとして論文にまとめ、刊行した。
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